商業月面輸送サービス

商業月面輸送サービス（CLPS）とは

商業月面輸送サービス（Commercial Lunar Payload Services, CLPS）は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が、月面への科学観測機器や探査ローバーなどの搭載物（ペイロード）の運搬を、自ら宇宙船を開発するのではなく、民間の企業に有償で委託するプログラムです。

このプログラムの主な目的は、月輸送市場における民間企業の競争を促進し、コストを削減することにあります。また、従来のミッションより高いリスクを許容することで、新しい技術の導入を促します。サービスに参加できるのは、米国の企業に限られます。

当初は2021年以降、年に最低2回の月着陸を目指す計画でした。2025年3月現在までに、4件のCLPSミッションが打ち上げられ、うち1件が月面着陸後の主要なミッションに成功しています。

参加企業

CLPSには合計14社の米国企業が参加資格を得ています。複数回ミッションを受託しているのは、アストロボティック・テクノロジー、インテュイティブ・マシーンズ、ファイアフライ・エアロスペースなどです。日本のispaceのように米国以外に本社を置く企業は直接参加できませんが、パートナーシップを通じて協力しています。

NASAは、参加企業が独自の追加ペイロードを搭載することを奨励しています。

タスクオーダー

NASAは、CLPS参加企業にミッションを「タスクオーダー」として委託します。2024年8月現在、委託済みまたは計画中のタスクオーダーは合計13件です。タスクオーダー委託から月面着陸までは、最低28ヶ月から32ヶ月かかると予想されています。

タスクオーダー選定には様々な経緯があります。例えば、VIPERローバー輸送の20Aは延期され、19Cは一時撤回後に再発出されました。2020年からは、調達する月着陸機の設計・開発・製造の半分以上を米国内で行うという要件が適用されています。

具体的な委託例として、アストロボティック・テクノロジー社によるVIPERローバー輸送や、特定の高い推力エンジンが必要なCT-3ミッションを単独指名されたブルーオリジン社があります。これらのミッションはアルテミス計画にも貢献します。

ペイロード

CLPS契約は輸送サービスであり、ペイロード自体は別の公募・契約で開発されます。ランダーは輸送に加え、電力や通信などの支援を提供します。ペイロード選定はNASA内のCMSBが行い、NASA提供のレーザーリトロリフレクターアレイも搭載されます。

初期のペイロードはNASA主導でしたが、その後は大学や産業界からの提案も含まれるようになりました。2020年以降は、PRISM（月面でのペイロードと研究調査）という枠組みでの公募が中心です。PRISMでは、米国外からの貢献に制限があります。

PRISMで選定されたペイロードには、ローバーによる月表面磁場測定を行うLVxや、ドリルとサウンダーで月内部を探るLITMSなどがあります。

国際協力

海外からのペイロード貢献は、既存ペイロードの補完か、ランダーの余剰スペース利用で行われます。

ESAが開発した資源探査パッケージPROSPECTは、CLPSミッションで月の南極へ運ばれる予定です。これは、極低温ドリルや分析装置などで構成され、月面での水などの揮発性物質探索やISRU実験を目指しています。

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