善光寺ロープウェイ

善光寺ロープウェイ

善光寺ロープウェイは、かつて長野県長野市の地附山に存在した索道です。地元では善光寺ロープウエイや地附山ロープウェイとも呼ばれていました。このロープウェイは、長野市が観光開発を推進していた時代に、地附山への観光客輸送の主要な手段として建設されました。

歴史

1960年（昭和35年）6月、長野市は観光都市としての発展を目指し、五か年計画に基づく観光開発案を策定しました。この計画では、善光寺を観光の中心とし、周辺の大峰山、地附山、飯縄高原一帯を観光地として開発することが盛り込まれていました。この計画に基づき、地元資本によって設立された長野国際観光株式会社は、地附山を中心とした観光開発に着手しました。

1961年（昭和36年）春、善光寺御開帳と長野産業文化博覧会に合わせて、ロープウェイは雲上殿近くから地附山頂まで建設され、3月20日に開通しました。山麓の雲上台駅と山頂の地附山頂駅を結び、運行を開始しました。当時、このロープウェイのゴンドラは長野県下初の導入であり、雲上台駅の駅舎は鉄筋造りで食堂も併設されており、その規模は全国でも有数と言われていました。また、駅舎付近にはヘルスケアセンターも開設されました。

山頂には、長野平を一望できる食堂や、飛行塔を中心とした遊園地、ライオンがいた動物園、Tバー1基の小さなスキー場、池などを繋いだ観光リフトが整備され、多くの観光客で賑わっていました。しかし、1964年（昭和39年）8月に戸隠バードラインが完成すると、地附山が通過点となり、観光客は減少しました。昭和40年頃までは盛況でしたが、1971年（昭和46年）に長野国際観光は閉鎖、ロープウェイは市開発公社に移譲されました。その後、転機を図るも1974年（昭和49年）4月に運休、1975年（昭和50年）10月に廃止となりました。

ロープウェイの路線データは以下の通りです。

方式: 3線交走式
全長: 685m
水平長: 570m
傾斜長: 612.09m
高低差: 235m
支索の最急勾配: 29°
支柱数: 2基
最高支柱高: 20m
支索: 52mmダブルロックドコイル
曳索: 22mmフイラー型
尾索: 20mmフイラー型
主動原動機: 100HP
予備原動機: 30HP
搬器の名称: いいづな/とがくし
機器の自重: 1800kg
機器の製造年月: 1961年（昭和36年）2月
最大乗車人数: 41人（ガイド含む）
走行時間: 約5分
秒速: 3.6m
毎時最大輸送人員: 約1000人
運賃: 往復140円

現在

現在、雲上台駅の駅舎は取り壊され、土台の石垣が残っています。山頂駅も土台が残っており、現在はFMぜんこうじの送信所として利用されています。かつて遊園地があった場所は、テレビ局の送信所や長野県警白バイ隊のトライアル練習場として使われています。周辺には、当時の名残がいくつか点在しています。ロープウェイの搬器は廃止後、倉庫として使われていましたが、2台とも現存しています。


善光寺ロープウェイは、かつての長野市の観光開発を象徴する存在であり、その歴史は地域の変遷を物語る貴重な記録となっています。

参考資料

長野市誌編さん委員会『長野市誌 第七巻 歴史編 現代』 長野市、2004年（平成16年）発行
「青春の交差点・1集」 丸光・丸善の昭和30年代 善光寺ロープウェー／長野飛行場

関連事項

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