地附山

地附山（じづきやま）

長野県長野市の北西に位置する地附山は、標高733mの山です。裾花凝灰岩層で形成されており、その特異な地質が過去に大規模な地すべり災害を引き起こしました。

歴史

観光開発の時代

1960年代、長野市は観光開発に力を入れ、地附山はその中心的な役割を担っていました。1961年には善光寺ロープウェイが開通し、山頂には遊園地や動物園、スキー場などが整備され、多くの観光客で賑わいました。さらに、ゴルフ場や大展望浴場を備えたヘルスセンターも開業し、一大観光地として発展しました。

しかし、1964年に戸隠バードライン（戸隠有料道路）が開通すると、地附山は通過点となり、観光客は減少。1971年には長野国際観光株式会社が閉鎖し、ロープウェイも1975年に廃止されました。

地すべり災害

1985年7月26日、地附山では大規模な地すべりが発生しました。これは、長年の風化により変質した粘土質鉱物が、雨水を含み滑りやすくなったことが原因とされています。この地すべりにより、戸隠バードラインは寸断され、老人ホーム「松寿荘」が倒壊し、多くの犠牲者が出ました。

裁判では、戸隠有料道路の管理上の瑕疵が地すべりの原因と認定されました。この災害は、地附山の地質的な脆弱性と人為的な開発が複合的に影響した事例として、教訓を残しています。

地学的知見

地附山の地すべりは、小川累層と呼ばれる斜面で発生しました。この斜面は、畑山砂質泥岩層、裾花凝灰岩層、浅川泥岩層の3つの層で構成されており、特に裾花凝灰岩層が粘土化し、地すべりを誘発しました。この層は水分を多く含むとグリス状になりやすく、上に乗る土砂の重みに耐えられなくなることが、地すべりの原因となっています。また、地附山周辺では過去にも地すべりが発生しており、今回もその再発と捉えることができます。

防災メモリアル地附山公園

現在、地すべり跡地は防災メモリアル地附山公園として整備され、地すべり災害の教訓を後世に伝えています。園内には地すべり資料館や、集水井などの抑制工が設置されており、災害のメカニズムや対策を学ぶことができます。また、展望台からは長野市街地や志賀高原の美しい景色を一望でき、ローラー滑り台などの遊具も備わっており、地域の憩いの場となっています。

その他

地附山の東側には、1557年に武田軍が築いたとされる桝形城跡や、地附山前方後円墳などの史跡も残されています。

まとめ

地附山は、かつての観光地としての賑わいと、大規模な地すべり災害という二つの側面を持つ山です。現在は防災公園として整備され、過去の災害を教訓に、地域の防災意識向上に貢献しています。また、その特異な地質は、地質学の研究対象としても注目されています。

参考資料

1985年長野市地附山地すべり緊急調査報告
長野市地附山地すべりの特異性とその災害に関する研究
地附山 長野県理化学会 地学部会 編 長野県の地学
番外編1 地附山地滑り 長野の大地みどころ100選
長野市地附山地すべり地域の土性

関連項目

戸隠バードライン
善光寺ロープウェイ

外部リンク

防災メモリアル地附山公園 - 長野市

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