喜多源逸

喜多源逸（きた げんいつ）

1883年（明治16年）4月8日 - 1952年（昭和27年）5月21日

喜多源逸は、日本の工業化学者であり、日本の化学工業の発展に大きく貢献しました。多岐にわたる研究テーマに取り組み、多くの業績を残しました。

経歴

喜多源逸は奈良県で生まれました。郡山中学を経て、京都市の第三高等学校（現在の京都大学総合人間学部）を卒業後、東京帝国大学工科大学（現在の東京大学大学院工学系研究科・工学部）応用化学科に進学しました。1906年（明治39年）に同大学を卒業後、1907年（明治40年）に同大学の講師となり、翌1908年（明治41年）には助教授に昇格しました。

1916年（大正5年）には京都帝国大学（現在の京都大学）に転勤し、理工科大学（現在の京都大学大学院工学研究科・工学部）の助教授として活動しました。その後、研究のため欧米に留学し、帰国後の1922年（大正11年）から1943年（昭和18年）に定年退官するまで、同大学の教授として教鞭をとりました。

京都大学勤務中は、油脂、化学繊維、燃料、ゴムなど、多くの資源に関する研究に携わりました。特に、ビスコースに関する研究、強力人造繊維製造法、人造石油製造法、アセチレンからの合成ゴム製造に関する研究で知られています。これらの研究により、農学博士号を取得し、1939年（昭和14年）には日本化学会会長を務めました。1930年（昭和5年）には京都大学化学研究所の所長も務め、後に理化学研究所の研究員としても活動しました。

定年退官後は、浪速大学（現在の大阪府立大学）の初代学長に就任しました。1949年（昭和24年）には再び日本化学会会長を務めました。晩年は、京都大学燃料化学科の開設や日本化学繊維研究所の創立に携わり、日本学士院の会員にも選ばれました。

研究内容

喜多源逸は、以下の分野で重要な研究成果を上げています。

ビスコース研究: ビスコースの製造プロセスや性質に関する研究
強力人造繊維製造法: 強力な人造繊維を製造するための技術開発
人造石油製造法: 石油代替燃料を製造するための技術開発
アセチレンからの合成ゴム製造: アセチレンを原料とした合成ゴム製造技術の開発

これらの研究は、日本の化学工業の発展に大きく貢献しました。

親族

妻の喜多襄（きた じょう、1883年9月、奈良県生まれ）は、ヴァイオリニストであり音楽教師でした。前田喜久蔵の妹でもあります。1901年（明治34年）に東京音楽学校本科専修部を卒業し、同校助教授を務めました。

著書

『油脂化学及試験法』（1932年）
『最近工業薬品製造法』（1916年）
『有機製造工業化学』（1913年）- 田中芳雄との共著。

関連書籍

『ノーベル賞の周辺 福井謙一博士と京都大学の自由な学風』（米澤貞次郎、化学同人） 1999年
* 『化学者たちと京都学派 喜多源逸と日本の化学』（古川安、京都大学学術出版会）2017年12月5日発売

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