喰違の変

喰違の変（くいちがいのへん）

喰違の変は、明治7年（1874年）1月14日に東京・赤坂の喰違坂で発生した暗殺未遂事件です。この事件では、当時の右大臣であった岩倉具視が襲撃されました。事件は「赤坂喰違の変」や「岩倉具視遭難事件」とも呼ばれています。

事件の背景

この事件の背景には明治6年（1873年）に起きた征韓論争があります。この論争は、日本政府内部で朝鮮への進出を巡って起こったもので、特に征韓派の参議であった西郷隆盛や江藤新平、板垣退助らが敗北し、政権を離れたことが士族たちの間で不満を引き起こしました。これにより、特に征韓論に期待を寄せていた多くの不平士族たちの不満が高まりました。

その中でも、急病で一時的に政権を離れた太政大臣の三条実美の後任として論争を主導していた岩倉具視や、内務卿の大久保利通への不満が特に増幅されていきました。このような背景から、岩倉が狙われることとなります。

暗殺未遂事件の発生

1874年1月14日の夜、岩倉は公務を終えた後、赤坂にある仮皇居から自宅に向かって移動していました。その際、赤坂喰違坂に差し掛かったところで、襲撃者たちが岩倉を襲いました。襲撃者は高知県の士族で、元外務省に勤めていた武市熊吉を中心とした9人のグループでした。

彼らは、西郷や板垣の元で働いていた元官僚や軍人でした。襲撃は一斉に行われ、岩倉は眉と左腰に軽い傷を負いましたが、不運にも皇居の四ッ谷濠に転落して、襲撃者たちの視界から消えたため、命拾いをしました。しかし、この襲撃による精神的なショックは大きく、彼は公務に復帰するまでに約一ヶ月の療養を必要としました。

襲撃者たちの処分

襲撃事件が発生した後、内務卿の大久保利通は直ちに状況を確認しに行き、岩倉が怪我を負ったものの無事であったことを知って安心しました。しかし、不平士族による政府高官への襲撃という脅威を重く見た大久保は、警視庁に対して犯人の捜索を急かせました。

その結果、事件からわずか3日後の1月17日には襲撃者たちが逮捕されました。逮捕の手がかりとなったのは、襲撃現場から見つかった武市熊吉の下駄でした。最終的には同年7月9日に行われた裁判で、彼ら全員が斬罪の判決を受け、伝馬町牢屋敷で処刑されることになりました。

結論

喰違の変は、明治時代における政局の流動性や士族の反発といった複雑な社会的背景を反映した事件でした。襲撃を受けた岩倉はその後の公務に復帰しましたが、この事件は日本の歴史の中でも重要な意味を持つ出来事として語り継がれています。さらに、事件から4年後の明治11年（1878年）には、大久保利通が紀尾井坂で襲撃され、暗殺される運命をたどることになります。このように、喰違の変は明治政府における緊張感の高まりを象徴する事件となったのです。

もう一度検索