伝馬町牢屋敷

伝馬町牢屋敷の歴史と構造

伝馬町牢屋敷（てんまちょうろうやしき）は、かつて江戸に存在した囚人の収容施設で、現在の東京都中央区立十思公園（じっしこうえん）にその一部が残っています。この場所は東京都指定の文化財（旧跡）としても知られており、歴史的価値が高いです。

江戸時代の牢屋の役割

江戸時代の牢屋には主に4つの機能がありました。第一に、未決囚を収監すること、第二に、有罪判決を受けた者を刑の執行まで拘束すること、第三に、自由刑としての永牢や過怠牢に囚人を収監すること、そして最後に、死刑や他の刑罰の執行です。特に伝馬町牢屋敷では斬首や入れ墨など、さまざまな刑罰が行われていました。これらの機能から、伝馬町牢屋敷は現代でいうところの拘置所に近い役割を担っていたといえます。

施設の概要

伝馬町牢屋敷は日本橋小伝馬町3丁目から5丁目に位置し、広さは約2677坪（約8850平方メートル）でした。天正年間に設けられたこの施設は、後に慶長年間に小伝馬町へと移転しました。高野長英や吉田松陰などの著名な人物もこの牢屋に収容されており、特に吉田松陰は1857年に安政の大獄の際にここで斬首されました。現在、十思公園には「松陰先生終焉之地」の碑もあります。

群を抜く大きさ

江戸幕府にはいくつかの牢屋が存在しましたが、その中でも小伝馬町牢屋敷は最大規模でした。牢屋は三方を土手で囲まれ、外周には高さ約2.4メートルの練塀が築かれていました。外側には堀が巡らされており、入場するには南西部の表門または北東部の不浄門を通る必要がありました。

牢屋の運営

この牢屋を管理する責任者は囚獄（牢屋奉行）で、世襲であった石出帯刀がそれを担いました。彼の配下には初め40人の同心がいましたが、慶応元年（1865年）には76人に増員され、さらには30人の下男も配置されていました。

囚人は身分に応じて収容される場所が異なり、庶民は大牢や二間牢に、幕臣や高い身分の者は揚屋に収容されました。特に揚座敷は、天和3年（1683年）に設けられ、御目見以上の幕臣や身分の高い宗教家が収容されたため、設備が他よりも整っていました。

牢内の厳しい生活

牢内は非常に暗く、窓もなく通風や採光のない環境でした。囚人たちは汲み取り式のトイレから立ち込める悪臭の中で生活し、劣悪な環境が蔓延していました。食事は朝夕の2回で、主食は玄米と汁物が支給されていましたが、栄養状態は悪く、多くの囚人が皮膚病に悩まされました。毎年、死亡者が出ており、特に弘化元年（1844年）には626人が死亡した記録があります。

結論

伝馬町牢屋敷は、その設計や運営において歴史的な重要性を持つ施設であり、江戸時代の刑罰制度を理解する上で重要な役割を果たしました。現在もその一部が公園として残っていることから、訪れる人々に当時の歴史を感じさせています。

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