営団

営団とは：戦時下の特殊法人から東京メトロへ

営団とは、1941年（昭和16年）以降、国家総動員体制下において、国策会社と並び「官民協力」の性格を持つ特殊法人として誕生しました。公法人でも私法人でもない中間的な存在であり、個別の特別法によって設立されました。

その語源は「経営財団」の略称に由来します。当初は厚生省所管の住宅営団、鉄道省所管の帝都高速度交通営団（営団地下鉄）、農林水産省所管の農地開発営団（これらを「三営団」と呼びます）として発足し、その後、戦時体制下でその数を増やしました。

しかし、終戦後、GHQの方針により、帝都高速度交通営団を除き、ほとんどの営団は国策会社とともに廃止され、一部業務は公団へと引き継がれました。唯一、法人名として存続した帝都高速度交通営団も、2004年（平成16年）に東京地下鉄（東京メトロ）として民営化され、「営団」の名称は消滅しました。

営団設立の背景

営団の発案は、住宅政策の分野から始まったとされています。戦前の住宅政策は内務省社会局が所管していましたが、社会政策、そして国策としての住宅供給の必要性が高まりました。そこで、官民協力による住宅供給を推進するため、特殊法人の設立が検討され、1940年（昭和15年）に厚生省から「住宅営団法案要綱」が提示され、初めて「営団」という用語が用いられました。

一方、東京の都市化に伴う交通問題に対応するために設立された帝都高速度交通営団は、当初「帝都交通局」という名称で検討されていました。しかし、法制局の審査過程で「帝都高速度交通営団」へと名称が変更され、帝国議会に提出されることとなりました。

1941年（昭和16年）3月、住宅営団法、帝都高速度交通営団法、農地開発法が成立し、ここに営団が誕生しました。その後、戦時体制下で各省がこの枠組みを活用し、産業設備営団、重要物資管理営団、交易営団、食糧営団などが設立されました。また、外地においても、朝鮮住宅営団、台湾住宅営団、関東州住宅営団などが設立されました。

営団の特徴

営団の特徴としては、以下の点が挙げられます。

1. 会社形態では実施が難しい非採算事業を行うために設立された。
2. 官民協力の中間的な企業形態をとった。
3. 帝都高速度交通営団のように、採算性が見込める事業でありながら、公益との調整が必要な事業のために、公権力の監視下にある組織形態として設立された。

これらの特徴から、出資は政府、公共団体、民間が共同で行い、配当についても民間の出資者に優先的に分配される仕組みが設けられていました。

営団と国策会社の違い

営団と国策会社は、官民協力による生産力拡充と国家総動員体制の推進という点で共通していました。しかし、営団は、その目的とする事業が非採算事業であるため、国策会社の設立が困難な場合に選択される、例外的な企業形態でした。ただし、後に設立された営団の中には、採算事業の分野に進出するものも現れ、その特徴は変化していきました。

戦後の営団

終戦後、GHQの占領政策により、統制経済の中心を担った統制会や国策会社は閉鎖され、営団も同様の道をたどりました。しかし、帝都高速度交通営団は、戦時統制目的の組織ではないと主張し、その存続が認められました。その後、民間の出資を排除し、公法人となり、公団・公社との区別は曖昧になりました。

現在、株式会社東京地下鉄（東京メトロ）となり、東京都と財務大臣が株主となっています。

実在した営団

三営団：住宅営団、帝都高速度交通営団、農地開発営団
その他：中央食糧営団、地方食糧営団、産業設備営団、重要物資管理営団、交易営団、朝鮮住宅営団、台湾住宅営団、関東州住宅営団など

「営団」という名称は消滅しましたが、帝都高速度交通営団（営団地下鉄）として、その名残は今も私たちの記憶に残っています。

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