嘸蝦米輸入法

嘸蝦米輸入法：効率的な中国語入力システム

1989年、台湾の劉重次氏によって開発された嘸蝦米輸入法は、中国語（主に繁体字）のコンピュータ入力方式です。倉頡輸入法や大易輸入法と同様に、漢字を構成する字根を分解して入力する方式を採用しており、独特の規則と効率性で高い評価を得ています。

輸入法の誕生

劉重次は1969年から1975年にかけてヨーロッパに留学していました。その当時、中国語をテレックスで利用する方法を探求する中で、中国語文字の検索方法を考案。この経験が、後に嘸蝦米輸入法の開発へと繋がります。1990年には、この入力システムを基盤とする「行易有限公司」を設立し、広く普及に努めました。

名称の由来

「嘸蝦米」とは、閩南語で「何でもない」を意味する「無啥物」(bô-siáⁿ-mi̍h)の音訳です。ラテン文字表記は「Boshiamy」で、考案者の姓にちなんだ「Liu」という別名も用いられる場合があります。

字根の分類と入力方法

嘸蝦米輸入法では、漢字の字根を形、音、意味の3つのカテゴリーに分類し、アルファベット26文字に割り当てています。

形

字根の形状からアルファベットを連想します。例えば「命」という字は、「A」「O」「P」の3つの字根で構成されています。

音

字根の発音からアルファベットを連想します。例えば「西」はC、「爾」はR、「平」はPといった具合です。普通話の発音知識が必要となる場合もあります。

意味

字根の意味からアルファベットを連想します。例えば「車」はC、「女」はG、「手」はH、「水」はW、「火」はFといったように、英語の単語の頭文字が用いられている場合もあります。

その他

一部の字根は、上記の方法では割り当てられないため、個別に覚える必要があります。「土」はY、「鬼」はVなどです。

これらの連想方法は、初心者が300個にも及ぶ字根を覚えるための補助として有効ですが、熟練者になれば、字形を直接見て分解できるようになり、連想方法は不要になります。

字根分解の原則

漢字を字根に分解する際には、「上から下」「左から右」「外から内」の順序に従います。これは必ずしも筆順とは一致しません。例えば「彎」という字は、上部を「左から右」の順に分解します。

また、1つの字が5つ以上の字根に分解できる場合は、最初の3つと最後の字根のみを使用し、それ以外は省略します。「歡」は本来R、O、O、V、Iと分解できますが、ROOIと入力します。字根が3つ未満の場合は、最後の筆画を表す字根を追加します。「取」はR、Uの後にXを追加してRUXと入力します。

短縮コード

頻繁に使用される文字には、1打または2打で入力できる短縮コードが割り当てられています。「通」は本来TNQWですがTと短縮され、「是」はDEZですがJNと短縮されます。この短縮コードによって、入力効率が大幅に向上しています。

さらに、よく使われる偏や旁を約100文字の短縮字根にまとめています。「俞」はAURHの代わりにAHA、「曷」はWDNLの代わりにWDL、「易」はYDEMの代わりにYEPと入力できます。

嘸蝦米輸入法の特徴

アルファベット26文字のみを使用するため、中国語入力に熟練すると英語入力にも役立ちます。
繁体字、簡体字はもちろん、記号やひらがな、カタカナも入力できます。
Unicodeに対応し、Windows、Mac、Unix系、Androidなど、様々なOSで利用可能です。
試用版でも最大20組のユーザー辞書を追加できます。

まとめ

嘸蝦米輸入法は、独自の字根分解方式と短縮コードによって、効率的な中国語入力を実現した画期的なシステムです。長年の改良を経て、高い信頼性と汎用性を獲得しており、現在も多くのユーザーに愛用されています。

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