四式特殊輸送機

四式特殊輸送機の概要

四式特殊輸送機（よんしきとくしゅゆそうき）、または四式中型輸送滑空機（よんしきちゅうがたゆそうかっくうき）は、第二次世界大戦中に使用された大日本帝国陸軍の軍用グライダーである。この機体は、最初に試作名称「ク8」として開発され、連合国からは「Goose」や「Gander」というコードネームが付けられた。

開発の背景

1941年9月、陸軍は日本国際航空工業に対しク8の開発を命じた。最初のモデルは、自社製の一式輸送機からエンジンと燃料タンクを取り除き、降着装置を改良したものであった。この改良版の試作機「実験用滑空機」（ク8I）は、同年7月に完成し、実験の過程を経た。

その後、試験飛行の結果を受けて新規設計が行われることとなり、技師の笹尾庸三が主務者として新たなク8IIの開発に着手した。1943年5月20日には試作一号機が完成し、同月22日に初飛行を果たし、10月には量産が始まった。ク8IIは当初一時的に「四式中型輸送滑空機」と呼ばれていたが、1944年に「四式特殊輸送機」として正式に採用された。

生産と配備

この機体は、日国航空工業の平塚工場のほか、各地の紡績工場で部品が生産され、陸軍飛行場で組み立てられた。この現地での組み立てにより、終戦までに619機が生産された。福田軽飛行機や日本小型飛行機でも生産計画があったが、実現には至らなかった。

1944年には西筑波飛行場に滑空飛行第1戦隊が編成され、フィリピンに物資を輸送するなどの計画があったものの、実際にはごく限られた物資輸送のみが行われ、その後「烈号作戦」の準備中に終戦を迎えた。また、海軍の空挺滑空部隊や特設空輸部隊も訓練のため本機を使用していた。機体の強度を高める改良型「ク8III」も計画されたが、実際に製作されることはなかった。

機体の特徴

ク8Iは最大で乗員2名、もしくは1,500 kgの貨物を搭載でき、複座式の操縦席を備えていた。主操縦席はハンドル式、副席はスティック式であった。ク8IIでは、大量生産を考慮し、機体は木製羽布や合板を用いるなど生産工程が簡略化されている。主翼にはフラップがなく、上面と下面に空気抵抗板が設置されていた。

搭載可能な兵員は20名から24名であり、さらに四一式山砲や小型貨物自動車なども積むことができる。特に機首部分は、物資の積み下ろしが容易になるように操縦席ごと90度折り曲がる設計がなされていた。乗降用の出入口も胴体の左側に設けられていた。

主要な仕様

• - 乗員: 2名
• - 積載量: 兵員 20人
• - 全長: 13.31 m (43 ft 8 in)
• - 全幅: 23.20 m (76 ft 1 in)
• - 全高: 3.50 m
• - 翼面積: 50.7 m²
• - 自重: 1,630 kg
• - 全備重量: 3,500 kg (7,720 lb)
• - 超過禁止速度: 240 km/h
• - 最大曳航速度: 224 km/h (140 mph)
• - 最大滑空比: 15.9

まとめ

四式特殊輸送機は、特に戦争中の兵員や物資輸送という重要な役割を担った機体であり、その技術とデザインが当時の航空機産業に与えた影響は大きい。多くの困難を乗り越えて開発されたこのグライダーは、戦争の激動の中で活躍し、その歴史に名を刻んだ。

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