四日市瞬時電圧低下事故

四日市瞬時電圧低下事故について

四日市瞬時電圧低下事故は、2010年12月に中部電力四日市火力発電所で発生した、瞬時的な電圧低下による大規模な電力供給障害です。この事故は、四日市コンビナートをはじめとする広範囲の工場に操業停止などの影響を及ぼし、社会経済に大きな影響を与えました。

事故の概要

2010年12月8日午前5時21分頃、四日市火力発電所内の変電所にあるガス開閉装置につながる送電線でショートが発生しました。このショートは、開閉装置内の絶縁材として使用されていた六フッ化硫黄で絶縁された導体線3本全てで発生したことが後の調査で判明しました。このショートにより保護継電器が作動し、愛知県西部、三重県北部、岐阜県西部を中心とした地域で、約0.07秒間の瞬時電圧低下が発生しました。電圧低下の割合は、西名古屋変電所で約60%、南大垣変電所で約50%に達しました。

事故原因の詳細

中部電力の最終調査結果によると、事故の原因は、1986年に日立製作所が製造した断路器の組み立て時の不具合でした。断路器の構成部品を連結する際にわずかなずれが生じたままボルトで固定された結果、長年の使用によってボルトの強度が低下し、最終的に脱落、ショートに至ったと結論付けられました。中部電力は、この事故の責任は断路器を製造した日立製作所にあるとし、顧客への賠償には応じない方針を示しました。一方、日立製作所の変電事業を継承した日本AEパワーシステムズは、事故の責任を認め、再発防止に努めることを表明しました。

事故による影響

この瞬時電圧低下事故は、四日市コンビナートを中心とした広範囲の工場に大きな影響を与えました。

東芝四日市工場
NAND型フラッシュメモリの生産プラントでは、クリーンルームの空調が停止し、一部の生産ラインが停止しました。復旧には約2日を要し、フラッシュメモリの生産再開には半年以上かかる見通しとなりました。この影響により、2011年1月・2月分の出荷量が減少し、約100億円の減収が見込まれました。
コスモ石油四日市製油所
自家発電設備が停止し、製油所内が約3時間にわたり停電しました。蒸留や脱硫などの設備が停止し、原油処理の再開には時間を要しました。非常時の自動買電への切り替えも、停電のため正常に作動しませんでした。製油所の操業は事故の翌週に通常に戻りました。
* トヨタ車体いなべ工場
塗装ロボットのデータが一部消失し、操業開始が約1時間遅れる影響がありました。

この他にも、三菱化学、東ソー、パナソニック電工（四日市市）、本田技研工業（鈴鹿市）、三重ごみ固形燃料発電所（桑名市）など、三重県・岐阜県の大口需要家146件に影響が出たとされています。

事故の教訓

四日市瞬時電圧低下事故は、電力供給の安定性の重要性を改めて認識させる出来事となりました。また、設備の老朽化や製造時のわずかな不具合が、長期的には大きな事故につながる可能性を示す事例でもあります。この事故を教訓に、電力会社や製造業者は設備の点検や管理を徹底し、再発防止に努める必要があります。

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