四聖人の殉教

四聖人の殉教：コレッジョによる殉教の瞬間

『四聖人の殉教』（伊: Martirio di quattro santi, 英: Martyrdom of Four Saints）は、ルネサンス期の画家コレッジョが1524年頃に制作した油彩画です。この作品は、聖プラキドゥス、聖女フラヴィア、聖エウティキウス、聖ウィクトリヌスの殉教という、痛ましい場面を描いています。

作品の背景

この絵画は、パルマのサン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ聖堂にあるデル・ボーノ家の礼拝堂のために、同時期の作品である『キリストの哀悼』と対をなす形で制作されました。発注主は、パルマの貴族でローマ教皇パウルス3世の告白者であったプラシド・デル・ボーノです。聖プラキドゥスという珍しい主題の選択は、発注主の名前が聖人と同じであることに由来しています。

描かれた聖人たち

6世紀頃、聖プラキドゥス、聖女フラヴィア、聖エウティキウス、聖ウィクトリヌスの4人は兄弟として生まれました。彼らはローマの元老院議員テルトゥルスの子供たちでした。聖プラキドゥスは聖ベネディクトゥスの最初の弟子の1人であり、宣教の命を受けてメッシーナに赴き、フラヴィアと2人の兄弟もそれに加わりましたが、サラセン人の海賊によって殉教したとされています。

作品の特徴

コレッジョは、聖人たちの殉教という残酷な場面を描きながらも、彼らの法悦の瞬間を捉えています。画面左端では、処刑人が聖プラキドゥスの首に剣を振り下ろしており、彼は倒れようとしていますが、視線は宙を舞う天使に向けられています。聖女フラヴィアも背後から剣で刺されながらも、同じように天使を見上げています。彼らは死の瞬間に法悦に達し、コレッジョはそれを天使の出現という形で表現しています。聖女フラヴィアの頭上を舞う天使は、荊の冠と殉教の証であるナツメヤシの葉を持っています。画面右端には、すでに殉教した聖エウティキウスと聖ウィクトリヌスの遺体が横たわっています。

革新的な構図

この作品は、伝統的な図像を欠いていたため、コレッジョに革新的なイメージを作り出す機会を与えました。当初の準備素描では、4人の聖人が対称的に配置されていましたが、最終的には、礼拝堂に入った鑑賞者の視点を考慮し、対角線に沿って人物が再配置されました。この変更によって、画面に動きと深みが生まれ、よりドラマチックな表現となりました。

特に、聖プラキドゥスと聖女フラヴィアのポーズは大きく変更され、彼らが背をそらせて天使を見上げる姿は、法悦という精神状態を強調しています。天使は、単なる象徴ではなく、死の瞬間に聖人たちが見た内的な幻視として描かれています。処刑人たちは、この天使の存在に気づいていません。

作品の影響

ジョルジョ・ヴァザーリは、この絵画が設置された場所を間違えていますが、1550年にはすでに『四聖人の殉教』について言及しています。また、ミラノの大司教チェザーレ・モンティは、コレッジョの初期作品に加えて、この作品と『キリストの哀悼』の複製を所有していました。

まとめ

『四聖人の殉教』は、コレッジョの革新的な才能を示す作品です。残酷な殉教の場面を描きながらも、聖人たちの法悦の瞬間を捉え、鑑賞者に深い感動を与えます。構図や人物の配置、そして法悦の表現において、コレッジョの卓越した技量が見て取れる作品です。

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