四角岳

四角岳について

四角岳（しかくだけ）は、青森県、岩手県、秋田県にまたがり、標高1,003メートルの美しい山です。この山は、その名が示す通り明瞭な四角い形状を持っており、周辺の自然環境と共生しています。山の北側は青森県田子町に位置し、馬淵川水系の支流熊原川が流れています。東側も同様に田子町の杉倉川が、その一方で南側は岩手県八幡平市の米代川上流、そして西側は秋田県鹿角市の同川本流が流れており、これらの河川は四角岳の重要な水源となっています。特に米代川の流路は、地形的に深いところを通るため、鹿角市側の瀬ノ沢川本流が源とされています。

この山はかつて、その地下に良質な銅鉱石が埋蔵されていたことから、不老倉鉱山や四角岳鉱山、細地鉱山といった鉱山が存在しました。現在では、その遺構や歴史を感じながら登山を楽しむことができます。

登山については、秋田県方面からは国道103号を利用し、大湯温泉郷から安久谷川に沿う林道を通り、不老倉登山口まで進むことができます。一方、青森県側からの登山道も1994年に整備され、岩手県側にも登山道が存在します。特に岩手県側からの道は、四角岳鉱山の分教場跡や鉱石採取跡を通過するルートとなっており、登山者にとっては歴史的な観点からも興味深い場所となっています。

四角岳の山頂付近は高層湿原になっており、春から初夏にかけて様々な植物が咲き誇ります。特に5月下旬にはミズバショウやシャクナゲ、ミツバオウレンが美しい花を咲かせ、6月にはニッコウキスゲやウラジオヨウラク、キンコウカが観賞できるため、自然愛好家にとって魅力的なスポットとなっています。

また、青森県側の登山口からの道すがらには、県境に位置する大きなシナノキがあります。このシナノキは、2011年に行われた調査で、幹周合計が14.44メートル、推定樹齢400年と判明し、環境省のデータベースにも登録されています。これは、日本一の巨木として知られ、訪れる人々を魅了しています。

信仰

四角岳は、古くから周辺の人々にとって神聖な山として崇められていました。特に鹿角地方では、四角岳にまつわる伝説が存在します。「四角の鬼」と称される存在は、風が吹くとその年は飢饉になると信じられており、大湯や草木付近の人々から恐れられていました。東山が曇ると不吉な年として悪影響をもたらすとされ、地域社会に深く根付いた信仰を生んでいたのです。

左多六伝説では、左多六が四角岳の麓で捕らえたカモシカが逃げたことをきっかけに、四角の鬼が彼を捕らえさせた末に刑死するという話が伝わっています。このような伝説は、四角の鬼が人々に災厄をもたらす存在として認識されていたことを物語っています。また、民謡の中にも「四角岳から鬼ケツ出した」という歌詞が見られ、これは地域における四角岳の象徴的な位置付けを示唆しています。

このように四角岳は、高い山でありながら美しさと神秘的な信仰の対象ともなっている特別な場所と言えます。その影響は、鉱山の火災事件や諸々の歴史に色濃く残っており、これからも多くの人々にとって気になる存在であり続けるでしょう。

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