四谷大木戸

四谷大木戸：江戸の要衝から現代の交差点へ

四谷大木戸は、江戸時代に甲州街道の出入り口として設けられた関所です。現在の東京都新宿区四谷4丁目交差点付近に位置し、かつては江戸への出入りを取り締まる重要な役割を担っていました。

江戸の出入り口としての役割

1616年（元和2年）、江戸幕府は甲州街道の要所として四谷に大木戸を設置しました。地面には石畳が敷かれ、両側には石垣が築かれ、厳重な関所としての役割を果たしていました。この大木戸は、単なる通行管理だけでなく、江戸の治安維持や物資の流通を管理する上でも重要な拠点でした。

玉川上水と四谷水番所

大木戸に隣接して、1653年（承応2年）には玉川上水の四谷水番所が設けられました。玉川上水は、江戸の飲料水を確保するために作られた重要な水路であり、四谷水番所は、その水を江戸城内や市中へと分配する中継地点でした。この場所は、現在も東京都水道局新宿営業所があり、上水に関わる重要な場所であり続けています。明治以降、水道は近代化されましたが、玉川上水は暗渠化され、今もその下に水が流れています。

内藤新宿の開設と賑わい

1699年（元禄12年）には、大木戸の西側に甲州街道最初の宿場である内藤新宿が開設されました。これにより、四谷大木戸周辺はさらに賑わいを増し、江戸と地方を結ぶ交通の要所としての重要性を増しました。

姿を変える大木戸

1732年（享保17年）には『江戸砂子』にもその名が記載され、江戸の重要な場所として認識されていました。当初、夜間は木戸を閉めていましたが、1792年（寛政4年）以降、木戸は撤去されました。しかし、その後も四谷大木戸という名前は残り続けました。1829年（文政12年）成立の『江戸名所図会』には、木戸が撤去された後の様子が描かれ、多くの人や馬、籠が行き交う様子が記録されています。

明治維新後の変化

明治維新後、新政府は石畳や石垣を交通の障害とみなし、1876年（明治9年）に撤去してしまいました。これにより、往時の四谷大木戸の姿は失われました。

現在の四谷大木戸跡

現在、四谷大木戸の正確な位置は、新宿区四谷4丁目交差点にあたります。この場所は「四谷大木戸跡」として東京都の旧跡に指定されています。交差点の周辺には、いくつかの石碑が建てられており、その歴史を伝えています。そのうちの一つは、地下鉄工事の際に発見された玉川上水の石樋を使って作られています。

四谷大木戸の名残

四谷大木戸の名は、現在でも様々な場所や施設に残っています。例えば、新宿御苑の出入口の一つである大木戸門、四谷大木戸郵便局、大木戸児童遊園、大木戸こども園など、地域の人々にとって身近な名称として使われています。また、料亭や蕎麦屋などにもその名が使われ、歴史を今に伝えています。

四谷4丁目交差点の現在

四谷4丁目交差点は、現在では国道20号、東京都道418号北品川四谷線などの幹線道路が交わる交通の要所となっています。付近には、東京メトロ丸ノ内線の四谷三丁目駅、新宿御苑前駅などがあり、多くの人々が行き交います。

まとめ

四谷大木戸は、江戸時代から現代に至るまで、その場所が持つ意味と重要性を変化させながらも、地域社会に深く根付いています。その歴史を辿ることで、江戸から現代へと繋がる都市の変遷を垣間見ることができます。現在では、かつての関所の面影は残っていませんが、その名は様々な形で残り、人々の記憶に刻まれ続けています。

参考文献
新宿歴史博物館編集 『新宿文化財ガイド（改訂版）』 (財)新宿区生涯学習財団 2007年
安本直弘 『改訂 四谷散歩』 みくに書房 1998年
斎藤長秋 編「巻之三 天璣之部 四谷大木戸」『江戸名所図会』 2巻、有朋堂書店〈有朋堂文庫〉、1927年、268,270-271,274頁。NDLJP:1174144/139。

関連情報
甲州街道
内藤新宿
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