因島大橋

因島大橋は、広島県尾道市に位置し、瀬戸内海に浮かぶ因島と向島をつなぐ重要な橋梁です。本州四国連絡道路の一つである西瀬戸自動車道、通称「しまなみ海道」を構成する主要な橋の一つとして、交通網のみならず、観光ルートとしても重要な役割を果たしています。

建設経緯と概要

この橋の建設は1977年1月8日に着工し、約6年後の1983年12月4日に供用が開始されました。総事業費は約675億円に上ります。本州四国連絡橋の尾道・今治ルートにおいて、本州側から数えて2番目に位置する吊橋であり、本州四国連絡橋全体では大三島橋に次いで2番目に完成した橋です。特に吊橋としては、本州四国連絡橋の中で最初に架けられた歴史的な橋でもあります。道路としては、西瀬戸自動車道の向島インターチェンジと因島北インターチェンジの間に位置しています。因島側のたもとには、橋の完成を記念して整備された「因島大橋記念公園」があり、市民や観光客に親しまれています。また、建設途中の因島大橋は、映画『男はつらいよ口笛を吹く寅次郎』のロケ地としても使用され、映画のラストシーンにその姿を見ることができます。

構造と技術的特徴

因島大橋は、3径間2ヒンジ補剛トラス桁吊橋という形式を採用しています。橋長は1,270メートル、最大支間長は770メートルです。車道の幅員は14メートルです。架けられた場所は「布刈瀬戸」と呼ばれる幅約800メートルの海峡で、ここは瀬戸内海の主要航路である来島海峡の副航路、三原瀬戸航路の一部を構成しています。1日に400隻もの大型船舶が通行するため、航路の安全を確保するため、桁下（航路限界）は50メートルと非常に高く設定されました。この高い桁下を確保するために、長大な橋を架ける必要が生じ、当時国内でも有数の規模を持つ吊橋として計画されました。

橋の桁は、トラス構造を用いた補剛桁であり、ダブルデッキ（2層構造）となっています。上層は自動車が通行する車道、下層のトラス内部には、幅員約4メートルの自転車歩行者道が併設されています。この下層の空間を利用した自転車歩行者道の併設は、しまなみ海道の多くの橋に見られる特徴ですが、因島大橋はその先駆けの一つです。

技術的な側面では、因島大橋は国内の吊橋として初めて鋼床版を採用しました。また、吊橋のケーブルに使用されるワイヤーにおいて、世界で初めて素線数127本のストランドが用いられた橋としても知られています。これらの建設を通じて確立された先進的な技術や経験は、その後に建設された大鳴門橋、瀬戸大橋、来島海峡大橋、そして明石海峡大橋といった日本の長大吊橋プロジェクトに大きく活かされることとなりました。完成当時は日本最長の吊橋でしたが、その後の技術発展により、2016年時点では国内8位の長さに位置しています。

通行料金と自転車歩行者道

しまなみ海道は、他の本州四国連絡道路とは異なり、「瀬戸内海横断自転車道」として自転車や歩行者のための専用道が整備されていることが大きな特色です。因島大橋を含むしまなみ海道の各橋には、この自転車歩行者道があり、その通行には料金が発生します。しまなみ海道はサイクリングのメッカとして国内外から多くの愛好家が訪れるため、自転車歩行者道の整備やサービス向上が進められています。過去には、サイクリングを促進するため、2014年7月から2015年3月末にかけて「しまなみサイクリングフリー」と称し、他のしまなみ海道の橋と同様に自転車歩行者道が無料開放された期間もありました。

周辺施設：因島大橋記念公園

因島大橋の開通を記念して、当時の因島市（現在は尾道市の一部）によって橋の因島側たもとに整備されたのが「因島大橋記念公園」です。この公園は総合公園として機能しており、広々とした芝生広場を中心に、来訪者のためのレストハウスやキャンプ場などが設けられています。公園のすぐそばには大浜崎灯台があり、公園内には旧大浜埼船舶通航潮流信号所を利用した「大浜崎灯台記念館」が位置しています。この記念館に使われている建物は、近代に建設された木造の船舶通航潮流信号所としては国内で唯一現存する貴重なものです。さらに、公園の西側には、夏場に賑わうしまなみビーチ（大浜海水浴場）や因島アメニティプールがあり、周辺一帯が地域のレクリエーション拠点となっています。

構造諸元

路線名：国道317号バイパス（西瀬戸自動車道）
橋長：1,270m
最大支間長：770m
幅員（車道）：14m
航路限界：50m
橋梁形式：3径間2ヒンジ補剛トラス桁吊橋
主塔高：135.85m
補剛トラス主構高：9m

因島大橋記念公園の主な施設

芝生広場
キャンプ場
ちびっこランド
レストハウス
* 大浜崎灯台記念館（旧大浜埼船舶通航潮流信号所）

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