因州和紙

因州和紙：千年の歴史を紡ぐ鳥取の伝統工芸

因州和紙は、鳥取県東部（旧因幡国）で生まれた、長い歴史と伝統を持つ和紙です。特に旧青谷町と旧佐治村（現在は鳥取市）で作られる画仙紙は、全国シェアの6〜7割を占める日本一の生産量を誇ります。書道や書画、水墨画といった芸術分野で広く愛用されるほか、近年では建材や工芸材料としても注目を集めています。

歴史

因州和紙の歴史は、奈良時代にまで遡ります。正倉院文書には、8世紀前半に因幡国で生産された和紙の記録が残っており、これは日本最古級のものとされています。江戸時代には藩の重要な輸出品として保護され、明治時代には技術革新を経て生産量を拡大しました。しかし、西洋紙の普及とともに和紙の需要が減少する中で、因州和紙は新たな用途を開発し、全国的な知名度を確立しました。

古代

因幡国における和紙の起源は定かではありませんが、721年の「因幡国屯倉計帳断簡」が現存する最古の和紙とされています。この時代の和紙は品質が粗悪だったようですが、765年の「因幡国史牒」には、より品質が向上した和紙が記録されています。平安時代の延喜式には、因幡国から朝廷へ和紙が献上された記録が残っています。

中世・近世

戦国時代末期から江戸時代初期にかけて因幡国を治めた亀井茲矩は、因州和紙の輸出を奨励し、原料となる楮や雁皮の保護政策をとりました。鳥取藩も和紙の保護・奨励策を引き継ぎ、紙座を設けて需給を統制しました。この頃、美濃国から紙漉きの技法が伝えられたという伝承も残っています。

近代

明治時代に入ると、漂白技術の導入や紙漉き用具の改良が進み、生産量が増加しました。楮を原料とする傘紙や、包装・障子に用いられる美濃紙などが生産されました。また、この頃から三椏を使った和紙作りが本格化し、「佐治川名産筆きれず」という商品名で全国に販路を広げました。青谷では、湧水を利用した製紙集落が形成され、効率的な増産が行われました。

現代

戦後、西洋式の生活スタイルが普及し、和紙の需要が減少する中で、因州和紙の生産者は画仙紙や工芸紙の生産に力を入れました。機械漉きの技術を導入するなど、生産体制の改革も行われました。近年では、建材や照明器具、民芸品など、新たな用途への展開も進んでいます。2002年に完成した新首相官邸の壁紙にも因州和紙が使用され、海外にも輸出されています。

日本の音風景100選

因州和紙の紙漉きは、1996年に環境庁の「日本の音風景100選」に選ばれました。佐治村や青谷町の民家で行われる紙漉きの工程で、水を漉きあげる際の「ちゃっぽん、ちゃっぽん」という音が、伝統的な風物詩として評価されたものです。

文化

鳥取市岩坪地区では、紙漉きが特に冬期の女性の重要な仕事とされ、紙漉きの技術は一人前の証とされていました。この地域には、女性たちが紙漉きの過酷な作業を行う際に歌った「紙漉き唄」が伝承されており、これが発展して「紙漉き踊り」となりました。

因州和紙は、その長い歴史と伝統の中で、様々な変遷を遂げながら、現代においてもその価値を保ち続けています。伝統工芸品としての美しさはもちろんのこと、新たな技術を取り入れ、未来へと繋がる可能性を秘めた和紙として、その存在感を 더욱 높여갈 것입니다.

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