亀井茲矩

亀井茲矩：波乱万丈の生涯

亀井茲矩（かめい これのり）は、戦国時代から江戸時代前期にかけての武将であり、因幡鹿野藩の初代藩主です。彼の生涯は、尼子氏の家臣から豊臣秀吉、そして徳川家康へと仕え、激動の時代を生き抜いたものでした。

尼子再興軍から豊臣秀吉の家臣へ

弘治3年（1557年）、茲矩は尼子氏の家臣・湯永綱の長男として出雲国に生まれました。しかし、尼子氏が毛利元就によって滅ぼされると、彼は流浪の身となります。その流浪時代については不明な点も多いですが、京都に潜伏していた時期に尼子勝久や山中幸盛と出会ったと考えられています。茲矩は、山名氏と離反する頃から本格的に実戦に参加し始め、私都城を任されました。また、山中幸盛の養女を娶り、亀井姓を名乗ってその名跡を継ぎました。

当時の尼子氏再興の動きは、強大な毛利軍との戦いを強いられ、苦戦を強いられました。しかし、織田信長が台頭し、中国地方に勢力を拡大すると、尼子残党は織田氏家臣・羽柴秀吉の傘下に入り、播磨国を転戦します。茲矩自身は、明智光秀に属して丹波国で3,000石を知行され、信貴山城攻めにも参加しました。天正6年（1578年）に尼子勝久らが上月城で孤立し、勝久は自刃、幸盛も処刑されましたが、茲矩は羽柴軍と行動を共にしていたため難を逃れました。その後も羽柴軍に属し、鳥取城攻略で戦功を挙げたため、因幡国鹿野城主に任命され、1万3,500石を領しました。

近世大名として

信長の死後、秀吉が台頭すると、茲矩はその家臣となり、豊臣政権下において、宮部継潤のもとで「因幡衆」として銀山経営、干拓、用水路開設などの行政面で手腕を発揮しました。文禄・慶長の役では水軍を率いて朝鮮に出兵し、虎狩りを行った記録も残っています。

秀吉の死後、茲矩は徳川家康に接近し、慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは東軍に与して山名豊国を従え最前衛で戦いました。戦後、因幡高草郡に2万4,200石を加増され、3万8,000石の鹿野藩初代藩主となりました。江戸幕府下においては、農業開発、銀山開発、用水路開設などの行政面に手腕を振るう一方で、幕府の朱印状を得てシャムと貿易を行うなど、世界に視野を広げた実業家でもありました。慶長17年（1612年）に死去し、嫡子・政矩の代に石見国津和野へ加増転封されました。

多彩な逸話

茲矩は東アジアへの関心から、秀吉に琉球国を所望したという逸話があります。秀吉から「亀井琉球守殿」と書かれた扇を授けられましたが、朝鮮出兵初年に李舜臣の攻撃で奪われました。また、朝鮮出兵時に虎狩で得た虎を秀吉に送り、礼状を受け取っています。この礼状は長束正家が執筆したもので、数年後に関ヶ原の戦いで敵味方に分かれることとなる両者の関係を物語っています。茲矩は家康に次いで朱印船貿易のための西洋型帆船を自主建造しようとしましたが、実現には至りませんでした。

子孫と関連作品

政治家の亀井久興、亀井亜紀子親子は子孫にあたります。また、茲矩を題材とした小説やテレビドラマも制作されています。

亀井茲矩は、激動の時代を生き抜き、武将、大名、実業家として多岐にわたる才能を発揮した人物でした。彼の生涯は、現代においても多くの人々に影響を与え続けています。

もう一度検索