図書館の自由に関する宣言

図書館の自由に関する宣言は、1954年に日本図書館協会で採択された、図書館の基本的な役割と自由を定める重要な宣言です。この宣言は、図書館が国民の知る自由を保障するために、資料と施設を提供することを最も重要な任務と位置づけています。

宣言の内容

この宣言は、以下の5つの原則を掲げています。

1. 図書館は資料収集の自由を有する：図書館は、あらゆる種類の資料を自由に収集する権利を持つ。
2. 図書館は資料提供の自由を有する：図書館は、収集した資料を自由に利用者に提供する権利を持つ。
3. 図書館は利用者の秘密を守る：図書館は、利用者の個人情報や利用履歴を保護する義務がある。
4. 図書館はすべての検閲に反対する：図書館は、外部からの圧力や検閲に対して断固として反対する。
5. 図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る：図書館の自由が侵害された場合には、図書館員は団結してその自由を守る。

1979年には、「図書館は利用者の秘密を守る」が新しい第3宣言として追加され、旧第3宣言は第4宣言に改められました。この改訂は、練馬図書館テレビドラマ事件など、図書館利用者のプライバシー侵害が問題となった事件を受けて行われました。

図書館の自由と公共の福祉

図書館の自由に関する宣言は、知る権利を保障する一方で、プライバシー侵害や公共の福祉との折り合いをどのように取るかという課題も抱えています。過去には、『ピノッキオの冒険』における差別表現や少年事件に関する報道など、様々な事例で論争が起きました。

特に、差別表現を含む書籍の取り扱いについては、回収を求める声と、言論封殺への批判という二つの意見が対立しました。これらの問題を検討するために、図書館では以下の「検討の3原則」が定められました。

1. 問題が発生した場合には、職制判断によって処理することなく、全職員によって検討する。
2. 図書館員が制約された状況の中で判断するのではなく、市民の広範な意見を聞く。
3. とりわけ人権侵害に関わる問題については、偏見と予断にとらわれないよう、問題の当事者に聞く。

関連する事件と論争

図書館の自由に関する宣言を巡っては、過去に様々な事件や論争がありました。以下に主なものを紹介します。

練馬図書館テレビドラマ事件（1967年）: 図書館員が刑事の求めに応じて貸出記録を開示したことが問題となり、「図書館は利用者の秘密を守る」の項目が追加されるきっかけとなりました。
山口県立山口図書館図書隠匿事件（1973年）: 図書館の自由に関する宣言が改定されるきっかけとなった事件の一つです。
『ピノキオ』回収要求と閲覧制限（1976年）: 差別用語を含む作品の回収を求める抗議が起きました。
広島県立図書館事件（1984年）: 図書館の自由を巡る論争が起きました。
絵本『ちびくろサンボ』と人種差別の問題（1988年）: 人種差別的な描写が問題となり、図書館での取り扱いが議論されました。
地下鉄サリン事件での国立国会図書館利用記録押収（1995年）: 捜査のために図書館の利用記録が押収されました。
『完全自殺マニュアル』の閲覧制限要求（1996年）: 自殺を助長する書籍の閲覧制限が求められました。
堺市立図書館「BL」本排除事件（2008年）: 図書館が特定のジャンルの書籍を排除したことが問題となりました。
元厚生事務次官宅連続襲撃事件（2008年）: 個人情報が掲載された名簿の図書館での閲覧制限が求められました。
『はだしのゲン』の書庫入れ指示（2013年）: 特定の書籍が書庫に移動させられました。
大蔵出版による著作権問題（時期不明）: デジタル化された書籍の公開が著作権を巡り問題となりました。
『絶歌』の図書館での対応の違い（時期不明）: 図書館によって、ある書籍の扱いが異なりました。

これらの事件や論争は、図書館の自由が常に社会情勢や価値観の変化に影響を受け、その解釈や適用が常に検討されるべき課題であることを示しています。

図書館の自由に関する宣言