国営飛鳥歴史公園

国営飛鳥歴史公園は、奈良県高市郡明日香村に位置する広大な国営公園です。

公園の目的と成り立ち

明日香村は古代日本の中心地として、多くの貴重な歴史的遺産が点在しています。これらの歴史的風土や文化財を将来にわたり保護し、同時に地域の生活環境を改善し、遺産を適切に活用することを目的に、本公園は整備されました。

公園整備の契機となったのは、昭和41年（1966年）に制定された古都保存法です。この法律に基づき、明日香村の一部地域が歴史的風土保存区域に指定されました。しかし、その後、周辺地域の開発が進むにつれて、古代から受け継がれてきた貴重な景観や文化財が失われる懸念が生じました。

このような状況を踏まえ、昭和45年（1970年）に国は飛鳥地方の歴史的風土と文化財の保存に関する方針を閣議決定し、翌昭和46年度から公園整備事業に着手しました。

公園は複数の地区に分かれて順次開園しました。昭和49年（1974年）に祝戸地区、昭和51年（1976年）に石舞台地区、平成2年（1990年）に高松塚地区、平成6年（1994年）に甘樫丘地区が開園し、これら4地区が全面供用を開始しました。さらに、平成13年（2001年）にはキトラ古墳周辺地区が新たに都市計画決定され、平成28年（2016年）9月24日に開園しました。このキトラ古墳周辺地区には、文化庁と連携して建設された、キトラ古墳の極彩色壁画を保存・展示する「キトラ古墳壁画体験館 四神の館」も設置されています。

公園の構成地区と主な施設

国営飛鳥歴史公園は、村内の広範囲に点在する史跡や景観を保全・活用するため、複数の地区に分かれています。

石舞台地区: 公園の中心的な存在である石舞台古墳があります（有料）。また、あすか風舞台なども整備されています。
高松塚周辺地区: 高松塚古墳や中尾山古墳があります。公園のインフォメーション拠点である国営飛鳥歴史公園館（無料）では、飛鳥の歴史や史跡について立体模型や映像で学ぶことができます。高松塚壁画館（有料）では、高松塚古墳の石室内部模型や出土品（模造）、壁画の模写が展示されています。
甘樫丘地区: 標高148メートルの甘樫丘があり、山頂の展望台からは藤原京跡や大和三山、生駒山系などを一望できます。万葉の植物園路も設けられています。
祝戸地区: 西展望台や東展望台があり、飛鳥の里を一望できます。宿泊施設である飛鳥の宿「祝戸荘」もあります。
キトラ古墳周辺地区: キトラ古墳や古墳鑑賞広場、四神の広場があります。キトラ古墳壁画体験館 四神の館のほか、体験工房や農体験ができる施設も備わっています。

イベントと体験プログラム

年間を通して、様々なイベントや体験プログラムが実施されており、多くの来園者で賑わいます。

飛鳥光の回廊: 毎年9月に行われる明日香村全体のイベントで、公園も主要会場の一つとなります。高松塚周辺地区では、光を使った大規模な地上絵などが披露され、イベントのハイライトとなっています。
里山あそび広場: 春と秋に開催され、昔ながらの遊びや自然素材を使った工作など、親子で楽しめるプログラムが提供されます。公園ボランティアによって企画・運営されています。
国蝶オオムラサキ放蝶会・放虫会: 甘樫丘地区で国蝶オオムラサキの保護・増殖活動の一環として行われます。特に初夏の放蝶会は人気のイベントです。
体験プログラム: 遠足や修学旅行などの団体向けに、歴史、クラフト、環境教育といった分野のオリジナルプログラムが用意されています。
通年・季節イベント: 「古都・飛鳥散歩」や「里山自然教室」などの通年イベントに加え、夏休みなど季節に応じた企画も開催されています。

アクセスと周辺施設

公園へのアクセスは、近鉄橿原神宮前駅または飛鳥駅からバスを利用するか、近鉄飛鳥駅からは徒歩でもアクセス可能です。自動車の場合は、阪和自動車道や南阪奈道路を経て国道169号を利用するのが一般的です。

公園周辺には、石舞台古墳、高松塚古墳、キトラ古墳といった古代史跡のほか、飛鳥寺跡、川原寺跡、酒船石遺跡などの重要な遺跡が点在しています。また、奈良県立万葉文化館、飛鳥資料館、明日香村埋蔵文化財展示室などの文化施設も近くにあり、公園と合わせて飛鳥の歴史と文化を深く学ぶことができます。

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