甘樫丘

甘樫丘：古代の息吹を感じる丘

甘樫丘は、奈良県高市郡明日香村の豊浦と川原に位置する標高140メートルの丘陵です。飛鳥川の西岸に広がり、東西数百メートル、南北約1キロメートルに及ぶ広大な丘陵地帯は、その全体が国営飛鳥歴史公園の甘樫丘地区として整備されています。

歴史

甘樫丘は、古くは『日本書紀』にも記述が見られる由緒ある場所です。誓盟の神を祀る甘樫坐神社が鎮座し、允恭天皇の時代には盟神探湯（くかたち）が行われたと伝えられています。特に注目されるのは、乙巳の変（645年）以前に、蘇我蝦夷・入鹿親子が権勢を誇示するために丘の麓に邸宅を構えていたという伝承です。2007年には、東麓遺跡から7世紀前半から中頃のものと見られる建物跡や石垣が発見され、蘇我氏の邸宅跡ではないかとして大きな注目を集めました。さらに、2020年からの明日香村教育委員会と関西大学による発掘調査では、蘇我氏滅亡後の時代の建物跡や石列も見つかっています。山腹には、明日香村の保全に尽力した犬養孝氏が揮毫した万葉歌碑（志貴皇子（巻1-51））も建立されています。

地理と景観

甘樫丘は、飛鳥地方を代表する景勝地の一つです。丘の北側には甘樫丘展望台、南側には河原展望台が整備されており、明日香村内はもちろんのこと、橿原市内の大和三山（耳成山、畝傍山、香具山）や、かつて都が置かれた藤原京の跡地などを一望することができます。特に夕暮れ時には、美しい夕焼けと大和の山々のシルエットが織りなす絶景を楽しむことができます。

公園としての魅力

甘樫丘は、歴史的な価値だけでなく、自然豊かな公園としても親しまれています。散策路は、『万葉集』に歌われた植物が植えられた「万葉の植物園路」として整備されており、四季折々の草花を楽しみながら散策することができます。その他、広々とした芝生広場や休憩所、駐車場なども整備されており、家族連れやグループでのピクニックにも最適です。

周辺には、水落遺跡、石神遺跡、飛鳥寺、飛鳥板蓋宮跡、雷丘など、数多くの史跡や文化財が点在しており、甘樫丘を拠点に明日香村の歴史と文化を巡る旅を楽しむことができます。

甘樫丘は、古代の歴史ロマンと豊かな自然が調和した魅力的な場所です。明日香村を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

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