国塩耕一郎

国塩耕一郎：昭和期の官僚、実業家、そして音楽界への貢献

国塩耕一郎(1905-1986)は、昭和時代の日本を代表する官僚、実業家として知られています。内務省に入省後、警察官僚としてキャリアを積み重ね、最後の官選茨城県知事として地方行政にも携わりました。さらに、戦後の混乱期には行政に復帰し、日本音楽著作権協会理事長として音楽業界にも大きな足跡を残した、多彩な経歴を持つ人物です。

華麗なる官僚時代と戦時下の葛藤

岡山県に生まれた国塩は、静岡県立静岡中学校、第一高等学校を経て、東京帝国大学法学部政治学科を卒業。1929年、内務省に入省します。広島県属としてキャリアをスタートさせ、地方警視、愛知県警察部保安課長などを歴任。1935年には警視庁警視・保安課長に就任し、警官音楽隊(警視庁音楽隊)の創設にも携わりました。

その後、内務省警保局図書課勤務を経て情報局勤務などを経験。厚生省職業局技能課長在任中の1943年夏、軍用石油輸送計画に関わる出来事が転機となります。小型木造船による石油輸送計画の技術者確保に奔走する中で、艦政本部と対立。政府の戦争遂行政策への疑問を深め、1944年7月に退官しました。この決断は、彼の信念と正義感を示す重要な出来事です。

戦後復興への貢献と地方行政

終戦後、戦後の混乱を収拾するため官界に復帰。広島県教育民生部長、終戦連絡中央事務局部長などを歴任した後、1947年3月、茨城県知事に就任しました。県議会議員選挙や知事選挙などを執行し、同年4月に退任。その後も、経済安定本部監査局長、中央経済調査庁査察部長などを務め、国家行政に貢献しました。

音楽界への貢献と晩年

官界を退いた後、国塩は日本音楽著作権協会会長、理事長、顧問を歴任。音楽著作権保護に尽力し、日本の音楽業界の発展に大きく貢献しました。その他、ニッタ相談役、チヨダシューズ取締役なども務め、幅広い分野で活躍しました。1960年には衆議院議員総選挙に立候補しましたが、落選しています。

人物像と家族

国塩の趣味は野球、西洋音楽、碁。宗教は日蓮宗でした。東京都武蔵野市吉祥寺、世田谷区中町に居住していました。家族には妻と3人の娘、1人の息子がいました。また、親戚には警視総監や外務省条約局長を務めた人物もおり、名家出身であることが伺えます。

著作と参考文献

国塩は『近代社会思想の解説』や『最新警察教科書』などの著作、さらには『職業檢査』の翻訳書を残しています。彼の生涯と業績を知る上で、これらの文献は貴重な資料となります。

まとめ

国塩耕一郎は、警察官僚としてのキャリア、戦時下の葛藤、戦後復興への貢献、そして音楽界への貢献など、波乱に満ちた生涯を送りました。彼の経験と業績は、日本の近代史を理解する上で重要な手がかりとなります。多様な分野で活躍した彼の生涯は、現代社会においても多くの示唆を与えてくれるでしょう。 彼の生き様は、時代の変化の中で、信念を貫き、社会に貢献しようとした一人の人物像を鮮やかに描き出しています。

もう一度検索