国境取締法
国境取締法の概要と背景
国境取締法（こっきょうとりしまりほう）は、1939年10月1日に施行された日本の法律で、陸接国境への接近を制限することを目的としています。この法令は、特に陸上国境の接近に関連する人々の出入りを禁止または制限することを規定しています。法律の背景には、1938年に発生した新劇女優岡田嘉子と杉本良吉による樺太国境を越えてのソ連亡命事件があり、この事件が国境管理の重要性を痛感させました。
法律の具体的な内容
国境取締法では、陸接国境（国境に接する領海の境界を含む）を指定し、その区域からの出入り制限を定めています。具体的には、勅令により次のような国境が設定されました。
さらに、これらの国境に隣接する区域（陸接国境隣接区域）は以下の範囲として設定されました。
これらの区域においては、特別な事情がない限り、朝鮮総督や樺太庁長官の許可を得ていない者は出入りできません。
申請手続きと規制内容
出入りを希望する場合には、府庁令に基づいて許可を申請する必要があります。申請書には、以下の情報を記入する必要があります。
このような詳細な情報をもとに許可が審査され、申請者が日本の利益を損なう可能性があると判断された場合、出入りは不許可となります。
刑罰に関する規定
国境取締法では、出入り規定に違反した場合の刑罰も厳格に定められています。
- - 陸接国境への無許可での出入りは、3年以下の懲役または3000円以下の罰金が科せられます。
- - 帝国の利益を傷つける意図で違反した場合は、10年以下の懲役と、違反に利用された物品の没収が行われます。
- - 陸接国境隣接区域の出入り規定に違反した者には、6か月以下の懲役または500円以下の罰金が科せられ、その目的が外国への潜入であった場合には、2年以下の懲役または2000円以下の罰金が適用されます。
法律の変遷
1945年8月、ソ連による南樺太への侵攻と日本の業務停止に伴い、国境取締法は実質的な効力を失いました。さらに、1946年1月のSCAPIN-677や1952年4月のサンフランシスコ平和条約により、樺太・朝鮮に対する日本政府の主権が確認され、法律の適用範囲はほぼ消失しました。国境取締法違反の罪に対しては、1945年10月の大赦令により、大赦が適用され、現に拘束されている者についても即時釈放が行われました。
総括
国境取締法は、日本の立法において重要な一歩であり、当時の社会情勢や国際関係の影響を色濃く反映したものです。しかし、時代の変化に伴い、実効性を失い、現在では行政府によっても現行法とは見なされていない状況です。この法律の歴史を理解することは、当時の国境管理政策の背景を知る上で不可欠です。
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