杉本良吉

杉本良吉について

杉本良吉（すぎもと りょうきち）は、1907年2月9日に東京に生まれ、本名は吉田好正です。彼は日本の演出家であり、演劇界での影響力を持ちながらも、悲劇的な運命を辿りました。最終的には、女優の岡田嘉子と共にソ連に亡命し、スパイの疑いをかけられて銃殺刑に処されたのです。

生い立ちと学歴

杉本は東京府立第一中学校を卒業後、1924年に北海道帝国大学農学部の予科に入学しましたが、中退し、1925年には早稲田大学文学部の露文科に入学しますが、こちらも数年後に中退しています。1930年代、彼は演出家として活動を開始し、特にプロレタリア演劇に力を入れていました。彼の美男ぶりから演劇仲間には「エロ吉」というあだ名がつけられていました。

演劇活動

1927年頃から前衛座などで演出を手掛け、多くの翻訳書も出版しました。彼は言葉の翻訳においても才能を発揮し、特に日本共産党との関係を深めていきました。1931年に日本共産党に入党し、以降はさまざまな舞台での演出を重ね、舞台稽古中に警察に追われることもありました。逃亡生活を経て、彼の目的は党から与えられた使命――コミンテルンとの連絡を取ることでした。

ソ連への亡命

1937年12月末、杉本は岡田嘉子と共に亡命を決意し、上野駅から出発しました。その後北海道を経て、樺太の敷香町に到達します。彼らは厳冬期の中、ソ連の国境を越えようとしました。新聞で取り上げられるほどの駆け落ち事件となり、彼らの行動は日本中を驚かせました。

しかし、ソ連に入国するや否や、二人は厳しい現実に直面します。落ち着く暇もなく、2人はスパイとして捕えられました。杉本は拷問を受けて黙秘を貫きましたが、後に虚偽の自白を強要されます。彼はスパイ容疑で裁判にかけられ、最終的に1939年に銃殺刑にされました。

家族と晩年

父親は数学教師であり、亡くなる時期に杉本が13歳の頃です。彼の母は6人の子を一人で育て上げました。妻である杉山智恵子はダンサーとして働き、彼との恋愛が深まり結婚に至りましたが、のちに病にかかり亡くなります。1940年には彼女も命を落としました。

杉本の遺産

杉本の名はソ連崩壊後に明らかになり、彼の真実の死の経緯が知られることになります。彼の名誉回復は1959年に果たされましたが、長い間その死因は病死として扱われていました。演劇界への貢献を残しつつ、彼の生涯は個人の理想や哲学が政治の渦に翻弄される様を如実に示しています。彼のストーリーは、昭和の激動の時代に生きた一人の演出家の苦悩と勇気を象徴しています。

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