国姫 (松平光通正室)

国姫 — 江戸時代前期の悲劇の女

国姫（くにひめ）は、寛永13年12月3日（1636年12月30日）に誕生し、寛文11年3月28日（1671年5月7日）にこの世を去った江戸時代前期の女性です。彼女は福井藩主の松平光通の正室であり、松平光長の娘であることでも知られています。彼女の母は毛利秀就の娘、登佐であり、名門の血を引いた女性としてその生涯を歩みました。

国姫は、松平光通のもとへ嫁ぎ、京都の公家からも高く評価される和歌の達人として名を馳せました。彼女は文化的な才能を持ち、しばしば光通との関係の良さも称賛されていました。しかし、この平穏な家庭に暗い影が差し込みます。

二人の間には女児が二人誕生しましたが、男児は授からず、そのことが後に国姫の運命を大きく狂わせる原因となります。光通は他の女性との間に権蔵（後の松平直堅）を設けていましたが、その重大な事実を国姫は知らずにいました。光通は権蔵の存在を国姫に隠し、彼女との関係を維持しようと努めます。

しかし、国姫の祖母、高田殿がこの状況を知ることとなり、激怒しました。高田殿は光通に対し、国姫との間に男児が生まれるべきだと強く主張し、最終的には起請文を取ることにまで至ります。こうして松平夫婦の関係は急激に悪化し、国姫は自らの不幸な運命に対して大きな苦悩を抱えることになりました。

彼女は男児を生むことが叶わなかったことに絶望し、最終的には自ら命を絶ってしまいます。その際、彼女の法名は清池院殿法譽性龍大禅定尼となり、福井市の大安寺に埋葬されました。

国姫の悲劇的な死は光通にも影を落とし、彼もまた後に自ら命を絶つことになります。この一連の出来事は福井藩内部における跡目争いや減封の引き金となり、藩そのものの未来に暗い影を落とす結果となりました。

家系について

国姫の家系にも注目すべき点があります。彼女の父は松平光長、母は登佐（毛利秀就の娘）です。彼女には兄弟姉妹もおり、松平綱賢や稲姫（伊達宗利の妻）などがいます。国姫自身の子供としては、長女の布与（鍋島綱茂の妻）と次女の市がいますが、次女は早世してしまいました。

このように国姫の人生は多くの悲劇に彩られ、江戸時代の女性の生き様を物語る一つの例として後世に伝えられています。彼女の和歌の才能や家庭内の複雑な事情は、歴史における重要な教訓を示すものであり、その生涯は未だに人々の心に刻まれています。

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