国学 (律令制の教育機関)

国学の概要

国学（こくがく）は、律令制のもとで官人を育成する目的で設置された地方の教育機関であり、大宰府における府学（ふがく）と同じ役割を果たしていました。この制度は大宝律令によって定められ、各国の国府には必ず1校の国学が設置されることが義務付けられました。入学資格としては、郡司の子弟の中から聡明な13歳から16歳までの者が対象とされましたが、定員に空きがあれば庶民の子弟も入学できるという柔軟性がありました。

国学では教育を受ける生徒の中には、官人候補としての役割を担う学生（がくしょう）と、医師候補である医生（いしょう）がいました。彼らの数は国の規模に応じて異なり、大国では学生が50名、医生は10名、上国ではそれぞれ40名、8名、中国では30名、6名、下国では20名、4名というように設定されました。

教育内容と卒業後の進路

国学での教育課程は、中央の大学寮や典薬寮とほぼ同様の内容で構成されていると推測されています。国学を卒業した生徒は、試験の結果に基づいて官人に登用されるか、または大学寮や典薬寮への入学資格を得ることができました。757年には、中央の制度改革により、学生が講経生、傅生、医生、針生、天文生、陰陽生、暦算生などに細分化されました。

教官と人材難

国学では、各国に1名ずつ国博士（くにのはかせ）と国医師（くにのいし）が配置されることが定められていました。しかし、当時は人材が不足しており、国学が設置されない国も存在したり、1人の教官が複数の国を担当することも珍しくありませんでした。国学の制度が整備されたのは、奈良時代末期に入ってからと言われています。特に、国博士や国医師が史生として扱われ、国府の業務に従事していた記録も残っています。

国学の衰退

しかし、平安時代に入ると律令制度が崩壊し、国学も徐々に衰退していきました。11世紀に入る頃にはほぼ消滅し、記録に残る限りでは平安時代末期から12世紀初めにかけて姿を消したと考えられています。このように、国学はその設立当初の目的からは程遠い形で歴史の中に埋もれていったのです。国学の存在は、日本の教育制度や官制度の変遷を反映する重要な要素であり、その解体は古代日本の社会構造の変化を象徴しています。

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