国家労働奉仕団

国家労働奉仕団（Reichsarbeitsdienst：RAD）

国家労働奉仕団（RAD）は、ナチス・ドイツ時代に設立された労働組織であり、失業対策と戦時中の軍事支援を目的としていました。アメリカの市民保全部隊に類似した組織として、幅広い年齢層のドイツ国民が参加しました。

組織構造

RADは、男性が所属する「Reichsarbeitsdienst Männer（RAD/M）」と女性が所属する「Reichsarbeitdienst der weiblichen Jugend（RAD/wJ）」の二つに大きく分かれていました。17歳から25歳までのアーリア系ドイツ人が対象となり、6ヶ月間の労働奉仕活動に従事しました。男性は徴兵準備期間としての役割も担っていました。

組織は40の労働管区（Arbeitsgau）で構成され、各管区は本部スタッフと保衛中隊（Wachkompanie）によって運営されていました。各管区には6～8個の労働大隊（Arbeitsgruppen）があり、各大隊には1200～1800名が所属していました。大隊はさらに中隊（RAD-Abteilung）、小隊へと細分化され、各団員にはシャベルと自転車が支給されました。

歴史

RADの起源は、ヴァイマル共和政時代の1931年に設立された「奉仕勤労団（Freiwilliger Arbeitsdienst：FAD）」に遡ります。大恐慌による失業者対策として、運河建設などの公共事業を行っていました。1935年、ナチス党の政権掌握後、NSADなどの組織と統合され、国家組織としてのRADが設立されました。

RAD団員は、市民サービス、軍事施設の建設、公共事業、農業計画など、多岐にわたる活動に従事しました。特に、アウトバーン建設や軍事道路の整備など、戦時体制を支えるインフラ整備に貢献しました。

第二次世界大戦が勃発すると、RADは軍事作戦にも動員されました。ポーランド侵攻以前は、アウトバーン建設が主な任務でしたが、戦争中は軍用道路、飛行場、鉄道の建設や補修が中心となりました。1939年10月時点で、1700個の中隊、総勢35万人が所属しており、フランス侵攻やノルウェー作戦にも派遣されました。

1941年のバルバロッサ作戦以降は、東部戦線でも活動し、自動車化RAD大隊が投入されました。1942年には、472個の中隊が東部戦線で活躍しました。その後、陸軍や空軍への徴兵も始まり、RADの団員は軍事要員としても活用されました。

1943年以降は、空軍支援部隊として対空砲の訓練を受け、高射砲部隊にも所属しました。RADは独自に軍隊化が進められ、88mm砲や105mm砲を運用し、対空・対戦車戦に投入されました。

1944年、連合軍のマーケット・ガーデン作戦を契機に、RADの一部が歩兵や砲兵として前線に投入され、人的資源が不足する中、ドイツ軍の最後の砦となりました。1945年には、訓練期間が短縮され、軍事訓練に特化されるようになりました。国民[[突撃隊]]への吸収が検討されましたが、RAD総裁ヒールルの抵抗により、準軍事組織としての地位を維持しました。

敗戦間際には、RADの青年たちによって3個師団が編成され、ベルリン救出作戦に参加しました。

制服と階級

RADには独自の制服と階級制度が存在しました。制服は労働服としての機能性と、組織の一員としての規律を象徴するものでした。階級は、組織内での役割と責任を明確にするものでした。

その他

映画「意思の勝利」には、RADが登場し、その組織的な活動の一端が描かれています。

RADは、ナチス政権下で労働力としてだけでなく、軍事支援やプロパガンダの一環としても重要な役割を果たしました。

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