市民保全部隊

市民保全部隊（Civil Conservation Corps：CCC）

市民保全部隊（しみんほぜんぶたい、Civil Conservation Corps）は、1933年にアメリカ合衆国で実施された、世界恐慌対策としての失業救済を目的とした公共事業プログラムです。市民資源保全団とも訳され、英語の頭文字からCCCと略称されることがあります。このプログラムは、若年労働者の職業訓練の場として発足しましたが、第二次世界大戦の勃発により、その役割は軍隊に取って代わられ、1942年にその活動を終えました。

概要

世界恐慌時代のアメリカでは、若年層の失業が深刻な社会問題となっていました。高等学校を卒業しても就職できない若者が多数存在し、社会不安が高まっていました。こうした状況を打開するため、アメリカ政府は、若者たちを対象とした合宿形式での職業訓練プログラムを立ち上げました。

CCCの隊員たちは、キャンプでの集団生活を送りながら、道路建設、土壌保全のための小規模なダム建設、森林の伐採や植林などの国立公園維持管理作業に従事しました。これらの活動は、公共事業を通じて若者の雇用を創出するとともに、国土の保全にも貢献するものでした。

キャンプでの生活は、テントやバラックでの共同生活であり、厳しい僻地での作業や人間関係に馴染めない者もいました。1940年代以降に出版された小説やエッセイの中には、CCCの活動を皮肉的に、または否定的に描いたものも存在します。しかし、月額22～30ドル程度の給与の一部が親元へ送金されたため、少なくとも親からの評価は高いものでした。また、キャンプでの生活を通じて、約10万人の文盲の若者に教育を施すことができたという点も、CCCの大きな成果の一つと言えるでしょう。

参加要件

CCCのキャンプに参加するための条件は、当初18歳から25歳までの独身のアメリカ人男性で、失業中であることが条件でした。後に年齢制限は17歳から28歳に拡大されました。人種による制限はなかったため、参加者のおよそ9%は黒人でした。

規模

1933年7月には、1,520のキャンプに29万人が参加し、ピーク時の1935年夏には、2,500を超えるキャンプで50万人以上の若者が作業に従事していました。この規模からも、CCCが当時のアメリカにおいて、いかに重要な雇用対策であったかが伺えます。

CCCが登場する映画・小説

CCCの活動は、当時の社会情勢を反映する題材として、映画や小説にも登場しています。

Pride of the Bowery（1940年）
パブリック・エネミーズ（2009年）

参考文献

CCCについてより詳しく知りたい場合は、以下の文献を参照ください。

世界大恐慌（講談社学術文庫　秋元英一著）
アメリカの環境主義（同友館　ロデリック・F・ナッシュ著、松野弘監訳）

関連項目

CCCに関連する以下の項目も参照ください。

公共事業促進局
就職難
セオドア・ルーズベルト国立公園
シェナンドア国立公園
グレートスモーキー山脈国立公園
マンモス・ケーブ国立公園

外部リンク

* アメリカ横断ボランティア紀行第6話（ECIネット）

市民保全部隊は、世界恐慌という未曽有の危機の中で、若者の雇用と国土の保全という二つの課題を同時に解決しようとした、アメリカの歴史において重要なプログラムの一つです。その活動は、現代の社会問題に対する解決策を考える上で、多くの示唆を与えてくれます。

もう一度検索