国栖

国栖について

概要

国栖（くず、くにす）は、日本の大和国吉野郡および常陸国茨城郡に住んでいたとされる先住民です。この名称は国巣や国樔などとも表記されています。国栖はその文化や習慣を通じて日本の歴史に深い印象を残しており、特に大和朝廷との関わりで知られています。

大和国における国栖の歴史

『古事記』では、国栖の祖先として国神イワオシワクノコが紹介されています。特に、神武天皇の時代に彼らが吉野国巣の祖として位置づけられたことが記されています。また、『日本書紀』の応神天皇の19年の条では、応神天皇が吉野宮を訪れた際に国樔の人々が来朝し、彼らが醴酒を奉り、歌を披露したと伝わっています。当時の国栖の人々は素朴で、山の恵みであるカエルや果物を食べて生活していたと言われています。

国栖は交通の便が悪く、外界との接触が少なかったため、彼らの文化や慣習は古代のものを色濃く残していました。そのため、大和朝廷にとっては非常に珍しい存在だったようです。国栖はしばしば都へ赴き、栗や年魚（あゆ）などの特産物を大和朝廷に贈り、風俗を歌い奏でる文化を持っていました。『延喜式』には、吉野国栖が大嘗祭や宮廷の行事で御贄を献じ、歌を奏でる習慣が記載されています。

常陸国と国栖

常陸国では、『常陸国風土記』に国栖が「つちくも」「やつかはぎ」という名前で言及されています。この文献は、彼らが地域に根ざした文化を持ち、国民としてのアイデンティティを確立していたことを示しています。特に「寸津毘古(きつひこ)」や「寸津毘売(きつひめ)」という神々が名前として挙げられており、地域の信仰と文化に深く関わっていたことが伺えます。

クズとの関連性

特に興味深いことに、国栖は植物クズ（葛）との関連が示唆されています。クズの根から抽出されるデンプンは、国栖の人々が収穫し販売していたことで知られており、クズの名称の由来が国栖にあると考えられています。このことは、彼らの生活が自然とどれほど密接に結びついていたかを示しています。

末裔と現代の文化

国栖の末裔の中には、坊官として聖護院に仕えた世古雷がいるとされています。また、奈良県吉野町南国栖に位置する浄見原神社では、毎年旧暦1月14日に「国栖奏」という歌舞が奉納されています。これは地域における伝統文化の一部となっており、国栖の歴史を現在に伝える重要な役割を果たしています。

結語

国栖は日本の歴史において特異な存在であり、彼らの文化や習慣は長い間、人々の生活に根付いてきました。古代から自然と共生し、大和朝廷との交流を通じて多様な文化を形成した国栖は、今なお現代の文化に影響を与えています。

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