国民同盟 (イタリア)

イタリア国民同盟(Alleanza Nazionale)：ネオファシズムからの脱皮とイタリア政治への影響

国民同盟（Alleanza Nazionale、略称AN）は、イタリアの歴史において重要な役割を果たした政党です。前身はベニート・ムッソリーニ支持者らによって結成されたネオファシスト政党、イタリア社会運動（MSI）であり、その歴史は複雑で興味深いものです。

極右からの脱却：ジャンフランコ・フィーニのリーダーシップ

1995年、イタリア社会運動を母体として発足した国民同盟は、党首ジャンフランコ・フィーニの下で劇的な変貌を遂げました。フィーニは党名変更だけでなく、政策の穏健化を推進。従来の極右的なイメージを払拭し、中道右派の保守政党への転身を図ったのです。この路線変更は、イタリア社会において、かつての極左政党であるイタリア共産党の穏健化と同様に、一定の支持を得ました。結果的に、国民同盟はフォルツァ・イタリアに次ぐ右派連合の主要勢力へと成長していきました。

しかし、この路線変更は党内に対立を生むことにもなりました。ムッソリーニの孫娘であるアレッサンドラ・ムッソリーニは、フィーニによるイスラエル訪問と、ムッソリーニ政権によるユダヤ人迫害への謝罪を不服として離党しました。これは、党の過去との決別を象徴する出来事でした。

イスラエルとの関係改善：過去との決算

国民同盟にとって大きな転換点となったのは、イスラエルとの関係改善です。MSI時代、イタリア・ファシズムはナチズムと比較して反ユダヤ的な色彩は薄かったものの、人種法制定など、ユダヤ人迫害に関与した事実を否定することはできません。フィーニはイスラエルを訪問し、人種法制定を謝罪。これにより、両国の関係改善に大きく貢献しました。この謝罪は、イタリア国民の間で過去との決算としておおむね好意的に受け止められました。しかし、党内の強硬派からは反発を招き、一部の議員の離党にも繋がりました。

経済政策：新自由主義への懐疑

経済政策において、国民同盟はフォルツァ・イタリアとは異なる立場をとりました。フォルツァ・イタリアが新自由主義を掲げる一方、国民同盟は資本主義への懐疑的な姿勢を維持。これは、公務員が多いローマなど、経済的に困窮する南部を地盤とする国民同盟の支持基盤を反映していると考えられます。

民族主義と党内派閥

国民同盟は、イタリア民族の団結と愛国心を訴える民族主義的なイデオロギーを継承しました。ただし、MSI時代ほど露骨なものではなく、党首フィーニ自身もムッソリーニへの尊敬を表明しつつも、そのファシズムへの賛美はより抑制されたものでした。しかし、国民同盟はMSIを起源とする多様な派閥を抱えており、キリスト教民主主義寄りの派閥から社会主義的なアプローチを支持する派閥まで、内部で複雑な政治的駆け引きが展開されました。

自由の人民への合流と終焉

2008年の総選挙で「自由の人民」に参加し勝利を収めた国民同盟は、2009年に解散し、「自由の人民」に合流しました。この合流は、イタリアの政党再編における一つの大きな節目となりました。国民同盟の歴史は、ネオファシズムからの脱却、イスラエルとの関係改善、そしてイタリア政治における複雑な力学を理解する上で重要なものです。その歩みは、イタリアの右派政治、そして、過去との向き合い方について多くの示唆を与えてくれます。

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