国民学術協会

財団法人国民学術協会：学術と文化の発展に貢献した民間アカデミー

1940年（昭和15年）、学派や学閥を超えた民間アカデミーとして設立された財団法人国民学術協会。その目的は、文化と学術の発展への貢献でした。官立のアカデミーが主流だった時代に、民間主導で文化・学術分野を支援するという画期的な試みは、日本の学術界に大きな影響を与えました。

設立の背景と理念

協会設立は、1939年（昭和14年）4月26日に発起人会合が開かれたことに端を発します。政治学者、経済学者、外交評論家など、各分野の第一人者たちが集まり、学術研究を支援する民間組織の必要性を痛感しました。当時の日本の学術界は、官立のアカデミーが中心で、新たな分野や視点からの研究は十分に支援されていませんでした。国民学術協会は、そうした状況を打破するため、官立機関の支援が届かない分野にも着目し、文化・学術の発展に貢献することを目指しました。

会員と活動内容

設立時の会員には、安倍賢一、芦田均、石原純、上田貞次郎、桑木厳翼、小泉信三、島崎藤村といった、当時を代表する著名な学者や文化人が名を連ねています。会員たちは、毎月開催される月例理事会や月例評議会で意見交換や討議を行い、活発な活動を展開しました。

協会の活動は多岐に渡り、研究への資金援助、学術書の刊行、公開講座の開催、そして機関誌『学術の日本』の編集出版などを行いました。特に、近世日本技術史、農学史、文化史、数学史、日本外交史といった、当時十分な研究が進んでいなかった分野への支援に力を入れていました。また、牧野富太郎の『牧野日本植物図鑑』や吉田小五郎訳の『切支丹宗門史』、竹内義雄の『論語の研究』といった重要な研究や著作も表彰しました。

これらの活動は、中央公論社の嶋中雄作による多額の寄付によって支えられました。嶋中雄作は、理事長を務めた桑木厳翼、三木清らと共に、協会の運営の中核を担いました。

財政基盤と主要役員

協会の財政は、嶋中雄作の多額の寄付が大きな柱でした。この寛大な支援によって、協会は安定した活動を継続することができました。主要役員には、理事長に桑木厳翼、常務理事に嶋中雄作、清澤洌、三木清といった、著名な人物が名を連ね、それぞれがその専門知識と影響力をもって協会を牽引しました。

協会の遺産

財団法人国民学術協会は、戦時下の困難な状況の中でも、民間主導による学術研究支援を継続しました。その活動は、日本の文化・学術の発展に多大なる貢献を果たしました。協会の活動は、学術研究の支援、学術情報の普及、そして文化・学術の発展という、現代においても重要な課題を提起しています。その功績は、今日においても高く評価されています。

参考文献

桑木嚴翼 編「財団法人国民学術協会概要（昭和16年8月8日現在）」『学術の日本 第1篇』中央公論社、1942年4月。

関連事項

中央公論社
桑木厳翼
嶋中雄作

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