国民投票 (中華民国)

中華民国の国民投票：歴史と制度

中華民国における国民投票は、国民投票法に基づき実施される重要な政治プロセスです。国民一人ひとりが直接、国家の意思決定に関与できる仕組みとして、その歴史と制度、そして実施状況を詳しく見ていきましょう。

投票方法と結果発表

中華民国の国民投票は、普通選挙、平等選挙、直接選挙、無記名選挙の原則に基づいて実施されます。投票の結果は所管官庁である中央選挙管理委員会（CEC）が発表し、発表後2年間は同議題に関する再投票は行われません。2021年時点で、CECは20件の国民投票を発表・実施しています。

法改正による制度の変遷

国民投票制度は、国民参加の拡大を目指し、幾度かの重要な改正が行われてきました。

2017年12月、立法院は国民投票法を改正し、国民投票の実施ハードルを大幅に引き下げました。具体的には、提案に必要な署名数、賛成に必要な票数、そして国民投票に参加できる年齢が変更されています。

提案基準の緩和: 総統・副総統選挙人総数に対する提案者数の割合が、従来の1,000人に5人から10,000人に1人に引き下げられました。これは、国民投票の提案をより容易にしたことを意味します。
署名数の減少: 賛成に必要な署名数が、5％から1.5％に引き下げられました。これにより、より多くの国民が国民投票の提案に参加できるようになりました。
賛成基準の変更: 賛成に必要な票数が、選挙人総数の1/2から1/4に引き下げられ、かつ有効な賛成票数が反対票数を上回れば、総投票数の割合に関する元のしきい値は無効になります。
不在者投票の導入: 法律で定められれば不在者投票が可能となります（2021年時点では法制化されていませんでした）。
精査委員会の廃止: 拒否権・検証権を持つ国民投票精査委員会が廃止され、CECによる精査に一本化されました。
電子署名システムの導入: 電子署名システム（ESS）が導入され、署名に利用できるようになりましたが、2021年時点では紙媒体でのみ利用可能でした。
投票年齢の引き下げ: 国民投票に参加できる年齢が20歳から18歳に引き下げられました。

2019年6月には、さらなる改正が行われ、国民投票は国政選挙と同時期には実施せず、2021年以降は2年ごとに「8月の第4土曜日」に実施することが規定されました。しかし、新型コロナウイルスの影響で、2021年の国民投票は12月18日に延期されました。

主要な国民投票

これまでに実施された国民投票には、以下のような重要なものがあります。

2004年: 陳水扁総統が提案した国民投票が、総統選挙と同日に実施されました。
2008年: 立法院選挙と同日に、複数の国民投票案が実施されました。
2018年: 2017年の国民投票法改正後、初めて実施された国民投票であり、中華民国史上最大の規模となりました。統一地方選挙に合わせて実施されました。
* 2022年: 憲法改正案に関する国民投票が、地方公務員選挙と同日に実施されました。この国民投票では、選挙権と被選挙権の年齢が18歳以上に引き下げられました。

今後の展望

国民投票制度は、国民参加を促進し、民主主義を深化させる重要な役割を担っています。今後の国民投票のあり方については、制度のさらなる改善、国民への周知徹底、そして国民の積極的な参加が重要となるでしょう。 国民投票制度の継続的な発展によって、中華民国の民主主義はさらに成熟していくことが期待されます。

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