国王自由選挙

国王自由選挙の概要

国王自由選挙（ポーランド語：wolna elekcja）は、ポーランド・リトアニア共和国における国王を選ぶ制度であり、血統ではなく候補者の個人的資質に基づいて選出される独自のプロセスです。この選挙制度は1572年から1791年まで行われ、最終的に5月3日憲法の制定に伴い廃止されました。

歴史的背景

国王選挙制度は、1386年にリトアニア大公ヨガイラがポーランド王として選ばれたことに始まります。この制度は、その後のヤギェウォ朝の統治にも影響を与えましたが、当初は新しい統治者の承認がメインの役割でした。1572年にジグムント2世アウグストが後継者を残さずに亡くなったことで、ヤギェウォ朝は終焉を迎え、国王の選出を巡る新たな制度が必要とされました。ここから国王自由選挙の実施に向けた動きが始まります。

制度の成り立ち

新たな国王選出のために、ポーランドの貴族層（シュラフタ）は様々な取り決めに合意しました。彼らは、カトリック教会の首座大司教に主権を譲渡し、インテレクスと呼ばれる臨時的な君主を選出しました。また、1573年のワルシャワ連盟協約では、国内の宗教的な多様性を認め、平和的共存を保つことが意図されました。

最も重要だったのは、次期国王を選挙で選ぶ制度の確立です。選挙権が全ての男性シュラフタに認められることになりました。各県で投票が行われ、選出された代議員がセナトに結果を報告します。国王選挙は基本的にワルシャワ近郊のヴィエルカ・ヴォーラで行われ、後に様々なトラブルを抱えることになりました。

選挙の実施と課題

国王自由選挙は最初の選挙で最も多くの貴族が参加したと言われていますが、その後は状況が厳しくなり、特に1697年以降は外国の軍事的圧力のもとで選挙が行われることが多くなりました。このような状況は、選挙の「自由」という側面を損なう結果となり、国王の権威を弱めました。

選挙後は、選出された国王はパクタ・コンヴェンタという契約を貴族と結び、政権運営に関する具体的な取り決めを行いました。特に、最初の国王であるヘンリク・ヴァレズィに由来するヘンリク条項がこの契約の中に含まれ、国王の権力が制約されることとなりました。

歴代国王と選挙の回数

国王自由選挙は、全体で13回実施され、以下の国王が選出されました。

• - ヘンリク・ヴァレズィ（在位1573年 - 1574年）
• - アンナ・ヤギェロンカ（在位1575年 - 1596年）
• - ステファン・バトルィ（在位1576年 - 1586年）
• - ジグムント3世ヴァザ（在位1587年 - 1632年）
• - ヴワディスワフ4世ヴァザ（在位1632年 - 1648年）
• - ヤン2世カジミェシュ・ヴァザ（在位1648年 - 1668年）
• - ミハウ・コルィブト・ヴィシニョヴィエツキ（在位1669年 - 1673年）
• - ヤン3世ソビェスキ（在位1674年 - 1696年）
• - アウグスト2世モツヌィ（在位1697年 - 1706年）
• - スタニスワフ・レシュチニスキ（在位1704年 - 1709年）
• - アウグスト2世モツヌィ（在位1709年 - 1733年）
• - スタニスワフ・レシュチニスキ（在位1733年 - 1736年）
• - アウグスト3世サス（在位1733年 - 1763年）
• - スタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキ（在位1764年 - 1795年）

結論

国王自由選挙はポーランド歴史において重要な役割を果たし、特に国家の政治的動向に深く関わりました。しかし、外国の干渉や内部の対立によってその本質が損なわれ、最終的には廃止されることとなりました。その後のポーランドの歴史においても、この選挙制度が持つ意義は語り継がれています。

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