国立労働銀行

国立労働銀行（BNL）の歴史とその役割

国立労働銀行（Banca Nazionale del Lavoro S.p.A.、略称BNL）は、イタリアを代表する銀行の一つです。その歴史は古く、設立から国営化、民営化、そして国際的な金融グループの傘下に入るまで、イタリア経済の激動期を反映しています。

設立と初期の歩み

BNLの源流は、1913年にアルトゥロ・オシオが中心となって設立された協同組合信用国立研究所（Istituto Nazionale di Credito per la Cooperazione、INCC）に遡ります。この設立は、時のルイージ元首相が推進した経済政策を具体化するものであり、ジョヴァンニ・ジョリッティの後援を得て実現しました。当初、INCCは国際金融市場への積極的な進出を目指していましたが、1920年頃にはイタリア国内の政治情勢、特にファシスト勢力の台頭による圧力から、営業圏を大幅に縮小せざるを得なくなりました。政府の介入により危機は回避されたものの、この出来事が後の国有化への伏線となります。

国有化と特権的地位

世界恐慌がイタリア経済にも深刻な影響を与える中、金融システムの改革が進められました。1929年、INCCは正式に国有化され、「国立労働銀行」と改称されました。これは、国家が経済への関与を強める流れの中で、主要な金融機関をその管理下に置こうとする動きの一環でした。1936年に制定された銀行法は、イタリアの金融システムに大きな変革をもたらしました。国内の主要24銀行が政府の直接管理下に置かれ、英国の制度を参考に、短期融資と中期・長期融資の機能が明確に分離されました。この銀行法の下で、BNLは政府保証債の発行や引き受けといった特権的な地位を与えられ、国営企業や国のコンツェルンに属する企業への構造的な融資を続ける役割を担いました。

戦後の活動と不祥事

第二次世界大戦を挟むおよそ20年間、BNLは国の映画産業にとって重要な資金供給源であり、同行にとって収益性の高い貸付先でした。しかし、1980年代には、同行の信用を大きく揺るがす事件が発生します。イラクのサダム・フセイン政権に対する武器不正輸出に関与したとして、同行の幹部らが逮捕・起訴され、総裁を含む複数の関係者が有罪判決を受けました。この事件は、国営銀行としてのガバナンスの欠如を露呈し、その後の改革への機運を高めることとなりました。

民営化とその後の変遷

1990年代に入ると、BNLは経営再建に取り組み、構造改革を進めました。そして、1998年には民営化が実施され、株式を上場しました。この民営化に際して、主要な株主となったのは、イタリアの保険大手であるINA（現ゼネラリ保険）と、スペインのビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行（BBVA）でした。BBVAは2000年12月にイタリアの協同組合保険グループであるウニポルと合弁事業を開始し、イタリア市場でのプレゼンスを強化しました。2005年には、ドイツ銀行の後押しを受けたウニポルがBNLの買収を試みるのではないかという憶測が流れましたが、最終的には実現しませんでした。そして、2006年、BNLはフランスの大手金融グループであるBNPパリバによる出資を受け入れ、その傘下に入りました。現在も、BNPパリバグループの一員として、BNLの名称は維持されています。

BNLの歴史は、イタリアにおける金融政策、産業振興、そして国際的な金融市場の動向と密接に関わっており、その変遷は多くの示唆を含んでいます。

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