国立自然史博物館 (アメリカ)

国立自然史博物館

アメリカ合衆国の首都、ワシントンD.C.に位置する国立自然史博物館（National Museum of Natural History、略称: NMNH）は、世界最大級の自然史博物館の一つです。スミソニアン協会が運営する複数の博物館の中でも特に重要な存在であり、首都中心部の象徴的な緑地帯であるナショナル・モールのすぐ近くにあります。時には「国立自然誌博物館」と表記されることもあります。

概要と歴史

この博物館は、植物、動物、化石、鉱物、岩石、隕石、そして文化遺産など、自然史と人類文化に関する多様な標本・資料を所蔵しています。そのコレクションは総数1億2500万点を超え、スミソニアン協会全体の所蔵品の大部分を占めています。訪問者の人気も高く、スミソニアン博物館群の中では常に上位にランクインしています。また、世界各国から集まった約185名の自然史学者がここで研究活動を行っており、自然および文化史分野における世界でも有数の研究拠点としての役割も担っています。

博物館の建物自体は歴史的価値があります。1910年に完成したこの建築物は、ホーンブロワー＆マーシャルによって設計されました。新古典主義の様式を取り入れており、1901年のマクミラン委員計画という首都の都市計画の一環として、ナショナル・モールの北側に建設された最初の主要な建造物の一つです。

運営

国立自然史博物館は、クリスマスを除くほぼ毎日、午前10時から午後5時30分まで開館しています。入館料は無料です。館内には観光客向けのインフォメーション・センターが設置されており、初めて訪れる人も安心して利用できます。膨大なコレクションの一部が常設展示されていますが、新しい収集品も継続的に加わるため、特定の期間だけ見られる企画展や特別展示も頻繁に入れ替わり、いつ訪れても新たな発見があります。

特に人気のある展示の一つである恐竜ホールは、映画「ナイトミュージアム2」の舞台となったことでも知られます。このホールは2014年から大規模な改装工事が行われ、最新の研究成果や展示手法を取り入れて2019年にリニューアルオープンしました。

主な展示物

博物館はその広大なスペースを活かして、様々なテーマの展示を階ごとに展開しています。

1階

モール側の入り口から入ってすぐの1階には、いくつかの主要な展示ホールがあります。ケネス・E・ベーリング哺乳類ファミリー・ホールでは、世界中の様々な哺乳類のはく製が展示されています。これはアメリカの慈善家ケネス・ベーリング氏の寄付によって実現したもので、第26代大統領セオドア・ルーズベルトが収集した標本も含まれています。この階で最も人気がある展示の一つが恐竜の骨格標本が並ぶ広間です。トリケラトプスなど、巨大な恐竜の化石が迫力満点に展示されており、その周辺では地球上の生命がどのように誕生し、進化してきたのかを、先カンブリア時代まで遡って解説する展示も見られます。その他、この階には欧米文化圏以外の多様な工芸品や文化遺産を紹介する展示もあります。

2階

2階には、世界的に有名な宝石や鉱物が展示されているジャネット・アネンバーグ・フーカー地質学ホールがあります。国立宝石コレクションの一部として、所有者に不幸をもたらすという伝説で知られる有名なホープダイヤモンドも、その神秘的な輝きを見せています。また、オーキン昆虫園では、生きた昆虫を観察したり、触れ合うことができる体験型の展示が人気です。館内にはIMAX社のオムニマックス投影システムによる大型映画館もあり、野生動物、地理、自然史といったテーマのドキュメンタリー映画などが上映されています。映画館は1階と2階にまたがる構造になっています。

地下階

地下階には、来館者が休憩したり食事をしたりできる施設が集まっています。ミュージアムショップでは、展示に関連した書籍やグッズを購入できます。アトリウム・カフェは軽食などを提供するカフェテリアです。講堂もあり、講演会などが開催されることもあります。また、この階の一角には、ワシントンD.C.周辺に生息する100種類以上の鳥類を紹介する展示コーナーもあります。

その他のエピソード

2019年には、ブラジル大統領ジャイル・ボルソナロ氏の訪米時に、博物館内で夕食会を開催する案が浮上しましたが、博物館側は開催を拒否しました。これは、ボルソナロ氏が過去に行った軍事政権への肯定的な発言や、女性・性的少数者などに対する差別的と見なされる発言を問題視したためです。ニューヨーク市長ビル・デブラシオ氏はこの博物館の対応を支持する姿勢を示しました。

国立自然史博物館は、その膨大なコレクション、研究活動、そして多様な展示を通じて、自然界と人類の歴史に対する理解を深めるための重要な拠点となっています。ワシントンD.C.を訪れる際には、必見の場所の一つと言えるでしょう。

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