国立銀行 (明治)

明治の国立銀行

明治初期、日本経済の近代化を支えた重要な要素の一つが、国立銀行でした。1872年（明治5年）に制定された国立銀行条例に基づき設立されたこれらの銀行は、単なる金融機関以上の役割を担っていました。ここでは、その歴史的背景、役割、そして現代への影響について詳しく見ていきましょう。

設立の背景と概要

国立銀行制度は、当時の大蔵少輔であった伊藤博文によって主導されました。この制度は、アメリカの「national bank」をモデルにしており、その直訳が「国立銀行」という名称の由来です。しかし、「国立」という言葉から誤解されがちですが、これらの銀行は国が直接設立・運営したものではなく、民間資本によって設立され、経営された金融機関でした。

設立当初、国立銀行は金貨との交換を保証する兌換紙幣の発行権を持っていました。最初に設立されたのは、第一、第二、第四、第五の4行です。その後、1876年（明治9年）の国立銀行条例改正により、不換紙幣の発行や、金禄公債を原資とすることが認められると、設立数は急増しました。1879年までに153もの国立銀行が開業し、この時点で新規の設立許可は停止されました。

これらの銀行は設立順に番号を名乗っており、「ナンバー銀行」とも呼ばれました。現在でも、十六銀行、七十七銀行、百五銀行、百十四銀行の4行が純粋なナンバー銀行として、第四北越銀行と十八親和銀行の2行が統合前の行名にナンバーを含む形で現存しています。また、八十二銀行のように、合併した銀行のナンバーを足し合わせて名称とした例や、三十三銀行のように数字の語呂合わせで名付けられた銀行も存在しますが、これらは旧国立銀行とは直接的な関係はありません。

日本銀行の設立と国立銀行の終焉

1882年（明治15年）に中央銀行である日本銀行（日銀）が設立されると、国立銀行の役割は徐々に変化しました。1883年（明治16年）の国立銀行条例改正と1884年（明治17年）の兌換銀行券条例により、紙幣の発行権は日銀に一元化され、国立銀行は兌換紙幣の発行から撤退することになりました。しかし、その後もしばらくは国立銀行発行の紙幣が流通していました。

1896年（明治29年）には国立銀行営業満期前特別処分法が制定され、国立銀行券の発行は法律で停止されました。これにより、国立銀行は普通銀行へと転換し、民間の金融機関としての役割を担うことになりました。この転換は、銀行の成長を促し、国の管理下から民間に委譲することを目的としていました。

現在への継承

国立銀行を前身とする銀行の多くは、国家総動員法に基づく戦時統合により、新たな法人として再編されています。そのため、現在の銀行の設立日は戦時統合時となっている場合が多く、国立銀行の設立日は「創業日」として扱われることが多いです。例えば、現在の秋田銀行は、第四十八国立銀行の設立日（1879年1月）を「創業日」とし、現在の秋田銀行となった1941年10月20日を「設立日」としています。このように、国立銀行の歴史は、現代の銀行のルーツとして、今もなおその影響を色濃く残しています。

国立銀行一覧

153行存在した国立銀行の一覧は、参考文献をご参照ください。各銀行の所在地、転換後の銀行名、変遷、そして現在まで存続している場合はその銀行名が記載されています。特に、国立銀行時代のナンバーを引き継いでいる銀行は、太字で示されています。

銀行名についての注釈

各銀行の名称には、その設立された順番や地域性が反映されています。これらの名称は、当時の社会や経済状況を理解する上で重要な手がかりとなります。

まとめ

明治時代の国立銀行は、日本の近代化を支えた重要な金融システムであり、その歴史は現代の金融機関にも深く繋がっています。これらの銀行が果たした役割を理解することで、日本の経済史に対するより深い洞察を得ることができるでしょう。


参考文献
佐藤健太郎『番号は謎』新潮社〈新潮新書873〉、2020年8月20日

関連項目
銀行
国立銀行条例
一県一行主義
* 国立銀行紙幣

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