不換紙幣

不換紙幣とは

不換紙幣とは、本位貨幣である金貨や銀貨との兌換が保証されていない法定紙幣のことです。政府の信用によって価値が保たれ、流通するお金であることから「信用紙幣」とも呼ばれます。現代の先進国で発行されている紙幣のほとんどは、この不換紙幣です。

不換紙幣の価値は、政府による政策金利の調整や徴税などの金融政策によって管理されます。これにより通貨の流通量（マネーサプライ）がコントロールされ、インフレーションを抑制し、不換紙幣の安定的な流通が維持されています。

不換紙幣の特質

不換紙幣には、次のような特徴があります。

政府の信用が基盤: 不換紙幣の価値は、政府への信頼によって支えられています。政府の信用が失われると、その価値も失われる可能性があります。
裏付けがない: 兌換紙幣のように、一定量の貴金属と交換できるわけではありません。紙幣自体に価値の裏付けがないため、その価値は市場の需給によって変動します。
製造コストが低い: 紙幣を製造するコストは、貴金属を加工するコストに比べて格段に低く、大量発行が容易です。

歴史

世界で初めて紙幣が発行されたのは、中国の宋代です。鉄銭の預り証として発行された交子は、後に濫発されて兌換が停止し、事実上の不換紙幣となりました。

19世紀から20世紀中盤にかけては、金貨や銀貨との交換を前提とした兌換紙幣が主流でした。しかし、1929年の世界恐慌をきっかけに、多くの国が金本位制を廃止し、不換紙幣へと移行しました。

日本では、1931年に金輸出が再禁止され、金本位制ではなくなりました。1942年には日本銀行法が制定され、兌換義務のない不換紙幣を発行できる体制が整いました。1971年のニクソン・ショックで金と米ドルの兌換が停止され、1976年にはIMFで変動相場制と米ドルの金本位制廃止が正式に確認されたことで、先進国における兌換紙幣は姿を消しました。

日本における不換紙幣

日本銀行券のうち、題号が単に「日本銀行券」と記載され、兌換文言がないものが不換紙幣です。具体的には、い号券のうち「日本銀行兌換券」であるい五圓券を除く5種、ろ号券、A号券、B号券、C号券、D号券、E号券が該当します。ただし、い号券の一部と、ろ号券、A号券の一部は現在通用停止となっています。

また、「日本銀行兌換銀券」や「日本銀行兌換券」と記載された紙幣でも、歴史的な経緯から事実上の不換紙幣となっていたものがあります。

旧壹圓券、改造壹圓券: 1897年の金本位制移行時に1円金貨が製造されなかったため、事実上の不換紙幣となりました。1942年の日本銀行法施行により法的にも不換紙幣として扱われることになりました。
「日本銀行兌換銀券」のうち額面5円以上のもの: 金本位制移行時に金兌換券となりましたが、1931年の金兌換停止以降は事実上の不換紙幣となり、1939年に通用停止となりました。
金兌換の「日本銀行兌換券」: 1931年の金兌換停止以降、事実上の不換紙幣となり、一部は1939年に通用停止、残りは1946年の新円切り替えで通用停止となりました。ただし、い五圓券、丙貳百圓券、丁貳百圓券、甲千圓券の4種は発行当初から事実上の不換紙幣でした。

このほか、明治通宝、国立銀行紙幣新券（旧券は金兌換券）、改造紙幣、小額政府紙幣なども不換紙幣として発行されていましたが、現在ではすべて通用停止となっています。

まとめ

不換紙幣は、現代の経済活動を支える重要な役割を果たしています。その価値は政府の信用によって維持され、金融政策によって管理されることで、経済の安定に貢献しています。しかし、その価値が変動するリスクも常に存在するため、経済状況を注意深く監視していくことが重要です。

脚注・出典

日本銀行

関連項目

管理通貨制度
金本位制
銀本位制
兌換券
預金封鎖
ニクソン・ショック
西郷札
藩札
アッシニア
* 太政官札

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