国鉄キハ55系気動車

キハ55系気動車：準急列車を支えた名車

キハ55系気動車は、日本国有鉄道（国鉄）が開発した準急形気動車です。1956年から1960年にかけて486両が製造され、全国各地の準急列車で活躍しました。蒸気機関車牽引列車を上回る性能と、客車に匹敵する快適性で、動力近代化計画の推進に大きく貢献しました。

開発の背景

1950年代、国鉄はキハ17系気動車を量産し、普通列車や快速列車に投入していました。しかし、1エンジンのキハ17系は勾配区間での出力不足が課題でした。そこで、DMH17Bディーゼルエンジンを2基搭載したキハ50形が試作され、勾配区間での性能が大幅に向上しました。この技術を基に、居住性を高めた新型準急形気動車の開発が始まりました。

車両の特徴

キハ55系は、10系客車と同様のセミモノコック構造を採用し、車体幅を拡大することで居住性を向上させました。車体長は21.3mと、当時の鉄道車両としては最大級でした。外観はクリーム色と赤色の帯で彩られ、二等客室部分は青帯となっていました。これは「日光形気動車」とも呼ばれました。

車体

10系客車同様のセミモノコック構造により、軽量化と車体強度の両立を実現しました。車体幅は2,803mmに拡大され、居住性が向上しました。全長は21.3mで、これは当時の在来線旅客車における最大基本規格となりました。

内装

客室内はクロスシートが配置され、窓側にはビニール製ヘッドレストが設けられました。初期の照明は白熱灯でしたが、後に蛍光灯に交換されました。暖房装置は軽油燃焼式温風暖房機が搭載されていましたが、後に温水暖房に変更されました。

主要機器

DMH17Bディーゼルエンジン（160PS）と液体変速機を搭載しました。1957年以降は、エンジンの出力が170PS、180PSへと向上しました。台車は当初DT19形でしたが、後に乗り心地の良いDT22A形に交換されました。

形式の種類

キハ55系には、さまざまな形式が存在しました。

キハ55形: 2エンジン搭載の基本形式
キハ26形: 1エンジン搭載の平坦線向け形式
キロハ25形: 二等・三等合造車
キロ25形: 全室二等車

改造と変遷

キハ55系は、その後の運用に合わせてさまざまな改造が施されました。キロハ25形やキロ25形は、普通車に格下げされ、キハ26形300番台、400番台となりました。また、郵便荷物車や荷物車に改造された車両も存在しました。

運用

キハ55系は、準急「日光」を皮切りに、各地の準急列車に投入されました。1959年には、初の本格的な気動車急行「みやぎの」にも使用されました。しかし、1961年からはキハ58系が製造され、キハ55系は地方ローカル線に転用されるようになりました。1987年までに全車が廃車され、JRには承継されませんでした。

各地での活躍

北海道: 急行「すずらん」「ちとせ」「えりも」「はぼろ」などで運用
東北: 急行「みやぎの」などで運用
関東: 準急「日光」「ときわ」「京葉」などで運用
中部: 準急「ひだ」などで運用
関西: 準急「かすが」「きのくに」「南紀」などで運用
中国: 準急「やくも」「しんじ」「あきよし」などで運用
四国: 準急「やしま」「土佐」「阿波」などで運用
九州: 急行「ひかり」、準急「くまがわ」「えびの」「ながさき」などで運用

私鉄への影響

キハ55系の設計思想は、南海電気鉄道や島原鉄道など、私鉄の気動車にも影響を与えました。これらの私鉄では、国鉄の準急列車への乗り入れを目的として、キハ55系に準じた車両が製造されました。

まとめ

キハ55系気動車は、日本の鉄道史において重要な役割を果たした車両です。準急列車網の形成に貢献し、その後の気動車開発に大きな影響を与えました。現在では全車が廃車されていますが、その功績は語り継がれています。

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