国鉄キワ90形気動車

キワ90形気動車の概要と特徴

キワ90形気動車は、日本国有鉄道（国鉄）が1960年に製造した気動貨車で、実際には有蓋車にディーゼルエンジンと運転台を備えたタイプの車両です。この車両は、ローカル線の貨物輸送を効率化する目的で開発されました。当時、国鉄では多くのローカル線で客車列車が蒸気機関車によって運行されていましたが、運行コストの削減が求められていたため、気動車が次々と投入されていました。気動車は当初の使命を果たし、運行経費の削減に貢献していましたが、同時に少量の貨物輸送に活用できないかと検討する動きがあり、キワ90形がその一環として試作されることとなったのです。

車両の構造

キワ90形は、全長約8メートルの二軸車両で、車体中央には荷物室が設けられ、最大荷重は7トンに設定されています。車体は工事を簡素化するために切妻形を採用し、前部はキユニ15形と同様の意匠が用いられています。この設計により、自ら7トンの貨物を積載しつつも、追加でおよそ2両分の貨車を牽引する想定がされていました。ただし、搭載されていたのは当時の気動車用標準機関であるDMH17Cエンジン（出力180 PS）1台のみであり、小型の車体設計と相まって、自車の軽量化が必須であった背景があります。走行装置には、キハ01形等と同様の2段リンク式の板ばねによる軸箱支持が採用されていました。

また、当初の塗装は全体が茶色であったが、後に車両の上半分がクリーム色、下半分が茶色というツートンカラーに変更されました。

運用状況

キワ90形の運用は、新造後宮崎機関区に配置された後、試験線区として妻線に導入されました。しかし、搭載されているエンジンのパワー不足から、2両の貨車を牽引するのが限界であり、多少の勾配でもスピードが著しく低下する問題が発生しました。そのため、実用としての走行性能はほとんど期待できず、貨物の積み換えが必要になる幹線との接続の際は、逆に運用上の手間が増大しました。このことが、ローカル線の機関助手の仕事を脅かす懸念も考慮されていたのかもしれません。

そのような背景から、キワ90形は次第に使われなくなり、宮崎に留置されていることが多くなりました。時折、貨物列車の最後尾に連結されることもありましたが、最終的に1969年にはキワ90 2が改造されてキヤ90 1となり、南房総地域での電化工事に用いるための事業用車両に生まれ変わりました。なお、キワ90 1は1971年に廃車されています。ローカル線では、ディーゼル機関車やトラック輸送への切り替えが進み、キワ90のような気動貨車の導入は行われなくなったのです。

キヤ90形

キヤ90形は、特に房総地区の電化工事における作業用に改造された気動車です。もともとキワ90 2を改造して製作されましたが、改造プロセスでは一方の運転台と車両の約3分の2が撤去され、作業用の設備が多目的に搭載されました。塗装は工事車両と同様の警戒色が使われており、当初は気動車としての運用が想定されていましたが、操作に関する不便が現場から指摘され、1970年には制御系の一部が変更され、速度制限がかけられました。その結果、ヤ390形として貨車編成に組み込まれました。その後、房総地域での電化工事が完了した後は、1984年に廃車となりました。

まとめ

キワ90形気動車は、その特異なデザインや運用の歴史が興味深い車両です。試験的な取り組みではありましたが、その存在は国鉄の貨物輸送の進化において重要な役割を果たしたと言えるでしょう。それは、ローカル線の運行をより効率的にするための試行錯誤の一環だったのです。

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