国鉄クモヤ90形電車

クモヤ90形についての詳細解説

クモヤ90形は、日本国有鉄道（国鉄）が1966年から1979年にかけて改造した事業用電車の一形式であり、72系電車を基本としています。この車両は、車両基地での電車の入れ替えや、工場での搬入・搬出の際に使用される牽引車として設計されました。クモヤ90形は全部で36両が改造され、また1968年にはこの形式を基にしたクモヤ91形も登場し、交流電化区間でも使用される制御車として運用されました。

車両の改造背景

クモヤ90形は、従来の17m級牽引車であるクモヤ22形の後継車両として位置づけられ、余剰となっていた72系モハ72形から改造されました。最初の改造は1966年から始まり、1971年までに17両が完成。その後、1979年にはさらに改造車両が増え、新造されたモハ72500以降のグループが改装されました。

この車両の特徴の一つは、モハ72形の車体を使用しており、前後に運転台が新しく設けられている点です。新性能電車との連結が可能になるように、KE70形ジャンパ連結器も装備されています。そして、1970年以降の改造では、自動空気ブレーキとの併結を考慮した「新旧切換装置」が追加されるなど、機能面でも充実が図られました。

番台別の特徴

0番台

0番台は主にモハ63形グループから改造されたもので、1966年から1969年にかけて23両が完成しました。この中の1両、クモヤ90015は霜取り用のパンタグラフを2基装備していましたが、1972年の火災事故で大きな修理を受け、側窓の形状が変更されるなどの改造が行われています。

800番台

800番台は、中央本線の狭小トンネルに対応するために、低屋根構造が採用されています。最初に改造されたのは1970年のクモヤ90801で、続いて1975年から1978年にかけて改造された802から805号が登場しました。これらは屋根全体が低く設計され、特にクモヤ90803は霜取りパンタグラフを搭載した独自の形状を持っています。

50番台

50番台は1970年から1971年に5両が改造されたグループで、ブレーキの新旧切換装置を搭載しています。外観は0番台と共通です。

100番台と200番台

100番台は50番台を基に寒冷地仕様へと発展したもので、90101号は72系の車体から改造されていますが、他の90102から105号は新製車体を利用しました。200番台はありそうでなかった、100番台の特性を引き継ぎながらも併結対象を拡張させたものです。これらの改造により、クモヤ90形はより多様な運用が可能となりました。

運用の歴史

クモヤ90形は直流区間の様々な車両基地に配置され、次第に新しい性能を持つクモヤ143形などに取って代えられていきました。1987年の国鉄分割民営化の際には、各地域の旅客鉄道会社に引き継がれました。特にJR東日本、JR東海、JR西日本に多くの車両が承継され、各社の運用が見られましたが、その後廃車が進み、最終的には2000年代早々に全車両が運用を終えました。

特に興味深いのは、JR東海に残されたクモヤ90005です。この車両は廃車後も解体を免れ、現在は浜松工場にて展示されています。

まとめ

クモヤ90形は、改造により多様な機能を持つ事業用電車として、鉄道の運営に密接に関わり続けてきました。その運用の変遷や多様性は、今も鉄道ファンたちの記憶に残る重要な歴史の一部となっています。これからも、こうした車両の歴史とその背景についての理解が深まることを期待しています。

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