国鉄シキ100形貨車

国鉄シキ100形貨車

国鉄シキ100形貨車は、1940年（昭和15年）に田中車輌で1両のみ製造された、80トン積みの低床式大物車です。製造当初は、日本で最大の荷重を持つ貨車として注目されました。国鉄、その前身である鉄道省、そしてJR貨物へと引き継がれ、長年にわたり活躍しました。

概要

本形式は、戦時中の重工業や軍需物資の輸送需要に応えるために製造されました。車体全長は25,200mmで、低床部の長さは5,000mm、レール面からの高さは788mmでした。足回りは特徴的で、外側には2軸ボギー台車、内側には3軸ボギー台車を配置した2-3-3-2の複式ボギー構造で、合計4台車10軸という構成でした。車体はリベット接合で組み立てられ、空気ブレーキにはKD203形が採用されています。

大戦後には、補強工事が実施され、最大積載荷重は90トンまで引き上げられました。また、1954年（昭和29年）3月には、富士電機が変圧器輸送のために、本形式の枕枠を利用して、吊り掛け式の梁を日本車輌製造で製作しました。この梁を装備することにより、95トン積みの吊り掛け式大物車として使用できるようになりました。この吊り掛け式梁は、トラス構造で強度を確保していました。この輸送実績を踏まえ、富士電機は1955年（昭和30年）にシキ160形を製作し、吊り掛け式輸送を本格的に開始しました。

シキ100形は、1987年（昭和62年）の国鉄分割民営化に伴い、JR貨物に車籍が承継されましたが、1994年（平成6年）6月に廃車となり、その長い歴史に幕を閉じました。

詳細

シキ100形の最大の特徴は、その低床構造と巨大な積載能力でした。これにより、大型の変圧器やボイラーなどの重量物を安定して輸送することができました。複式ボギー構造は、荷重を分散させ、安定した走行を可能にしました。また、吊り掛け式梁の採用は、輸送能力の向上だけでなく、より効率的な輸送を可能にしたと言えるでしょう。

戦後の補強工事により、積載荷重が90トンに増加したことは、復興期の輸送需要を支える上で非常に重要な役割を果たしました。また、富士電機が開発した吊り掛け式梁は、その後の大物車開発の方向性を示す先駆けとなりました。

シキ100形は、そのユニークな構造と歴史的背景から、鉄道ファンや研究者の間でも高い関心を集めています。現在では、実車を見ることはできませんが、その存在は日本の鉄道史に重要な足跡を残しています。

参考文献

吉岡心平『大物車のすべて 中』（初版）ネコ・パブリッシング〈RM LIBRARY 92〉、2007年4月1日。ISBN 978-4-7770-5196-0
吉岡心平『大物車のすべて 下』（初版）ネコ・パブリッシング〈RM LIBRARY 93〉、2007年5月1日。ISBN 978-4-7770-5200-4
貨車技術発達史編纂委員会 編『日本の貨車 -技術発達史-』（初版）日本鉄道車輌工業会、2009年4月30日。
「長物車・大物車」『日本国有鉄道百年史 第11巻』日本国有鉄道、1973年、737頁。NDLJP:12061428/396。

外部リンク

* 『特種貨物取扱の実際』 （国立国会図書館デジタルコレクション）写真、形式図

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