国鉄シキ280形貨車

国鉄シキ280形貨車の詳細

国鉄シキ280形貨車は、1958年1月23日に日本車輌製造支店で1両が製作された特別な貨車です。この貨車は、特大貨物、特に変圧器の輸送を目的として設計され、130トンまでの荷物を運ぶ能力を持っていました。その後、1960年には追加の荷重が対応され、165トンまでの荷物を運べるように改修されました。

設計と構造

シキ280形貨車は、吊掛式（シュナーベル式）による搭載方法を採用しています。この方式では、貨物を安定して運搬するために、特別な支持構造が必要となります。シキ280形は、走行性能の向上を図るために、従来の多軸台車を廃止し、2軸のNC-3形ボギー台車を2組使用しています。この結果、合計8つの台車を使用する16軸の大型貨車となりました。

貨車の長さは、材料を搭載しない状態で25,796mm、改造後は25,876mmとなります。さらに、荷受梁はトラス構造で、鋲接と溶接が併用されており、強度と安定性を確保しています。この構造は、大きな荷物を支える際の安全性を向上させるために重要です。また、ブレーキシステムには手動での積空変更が可能なKD203形空気ブレーキが組み込まれています。

脱線事故と対応

シキ280形の初の輸送時、1958年3月18日に東海道本線の蒲郡-幸田間で脱線事故が発生しました。この試験により、急ブレーキをかけた際の衝撃が100トンにも達することが分かり、心皿が脱落する危険性が指摘されました。そのため、最高速度は空車・積車ともに35 km/hに制限されることになりました。この制限では実用性に欠けるため、心皿の改造や死重の搭載が実施され、荷重が125トンへと変更されました。

改造と変遷

1960年7月13日には、同じ工場で新たな荷受梁が製作され、これにより貨車は165トン積みの吊掛式大物車としても使用できるようになりました。新たに作られた梁は「シキ280B1」と名付けられ、元々の梁は「シキ280B2」という番号が付与されています。これにより、空車時の長さは26,000mmへと変更され、依然としてトラス構造の良さが保たれています。

所有と運行履歴

シキ280形は富士電機の私有貨車として使用されていました。製造当初は安善駅で常備されており、その後、同社が製造した変圧器を各地へ運ぶ役割を担っていました。1962年には千葉工場の開設に伴い、京葉市原駅に常備場所が変更されました。2001年には日本AEパワーシステムズが所有権を引き継ぎましたが、2005年に全検切れとなり除籍されました。それでもなお、試験用として工場内で保管され続けています。

2012年8月18日には、厦貨物駅まで回送され、翌日の50周年記念イベントにて展示されました。このイベント後、同日中に返却されました。シキ280形貨車はその特異な構造と歴史から、多くの鉄道ファンや貨物輸送の専門家に興味を持たれ続けています。

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