国鉄シキ290形貨車

国鉄シキ290形貨車の概要

国鉄シキ290形貨車は、1960年と1964年に日本車輌製造で製作された高さ調整が可能な大型貨車です。この貨車は、主に大物の輸送に特化しており、特有の構造と設計を持っています。

製造と改造の背景

シキ290形の初号機が1960年8月4日に完成し、その後1964年には改良型が製作されました。最初のシキ290は80トン積みの低床形式、115トン積みの分割落し込み形式、165トン積みの吊り掛け形式のいずれにも対応できる柔軟性を持っていました。特に、この形状は日本の大物車の中でも、A梁、B梁、C梁と3種類の梁を装備することができる数少ない車両の一つとして知られています。

一方、後に製作されたシキ291は、分割落し込み形式のみに特化して使用されました。これにより、シキ290との設計上の違いが際立つこととなります。

車両の仕様

シキ290形貨車は、全長32,650mm、改造後は32,520mmとなり、低床部は5,000mm、レールの上での高さは780mmです。この貨車は強度を考慮して溶接構造が採用されており、台車には2-2-2-2-2-2-2-2軸の設計を持つベッテンドルフ式2軸ボギー台車NC-3B形を8台使用しています。このような台車構成は、日本の低床式大物車としては唯一無二のものです。

さらに、車両には空気ブレーキが装備されており、手動での積空切り替えが行えるASD方式のブレーキが使用されました。運転速度は、積載時は最大45km/h、空車では65km/hに達することができる性能を有しています。

梁の構成

シキ290の低床式梁はシキ290Aと呼ばれ、落し込み式梁はシキ290Cに分類されます。シキ291は全溶接構造を採用し、荷受梁の構造におけるトラス設計が特徴的です。それぞれ、貨物の搭載部分は約7,000mm×2,262mmのサイズであり、適切な強度を保ちながらも軽量化が図られています。また、シキ290の荷受梁は溶接と鋲接が組み合わせられていますが、シキ291は全てを溶接で構造化しています。

吊り掛け式梁のシキ290Bは、A梁やC梁に続き1970年に追加製造され、荷受梁もトラス構造で構成されています。これにより、空車時の全長は26,030mmとなり、運転速度は積載時35km/h、空車時65km/hを実現しています。

所有と歴史

シキ290は明電舎、シキ291は高岳製作所によって所有されていました。シキ290の初期の常備駅は大崎駅ですが、1961年に工場移転に伴い沼津駅に移動しています。シキ291の常備駅は小山駅でした。

廃車と解体

シキ290Aは1980年に、シキ290B・Cは2003年に廃車となり、またシキ291は2004年に解体されました。これらの歴史を通じて、シキ290形は日本の貨物輸送における貴重な存在としての役割を果たしてきたと言えるでしょう。

参考文献

• - 鉄道公報
• - 吉岡心平 『大物車のすべて 中』（初版）ネコ・パブリッシング、2007年
• - 吉岡心平 『大物車のすべて 下』（初版）ネコ・パブリッシング、2007年
• - 吉岡心平 『プロフェッサー吉岡の私有貨車図鑑』（復刻増補）ネコ・パブリッシング、2008年
• - 貨車技術発達史編纂委員会 編『日本の貨車 -技術発達史-』（初版）日本鉄道車輌工業会、2009年

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