国鉄チキ900形貨車

国鉄チキ900形貨車について

国鉄チキ900形貨車は、日本国有鉄道（国鉄）が1968年に導入した50トン積載の貨車です。この車両は主に長尺物を1両で輸送できるように設計されており、その長さは21,600mmです。この特徴により、従来の輸送方式では複数の貨車を編成していた長物貨物の取り扱いを革新しました。

設計の特長

チキ900形の特徴的な点は、長尺物の輸送のために特別に設計されたことです。従来の種類と比較して、長さ20メートルの物品を一度に運ぶことができるため、輸送効率が向上しました。このような設計の結果、チキ900形は国鉄の長物車の中でも最長の部類に入ります。

この貨車には、タキ50000形やシキ550形で使用されている3軸ボギー台車のTR78形を基にしたTR80形の台車が装備されています。この台車はメンテナンスフリーの密封形円錐コロ軸受を採用しており、本形式が唯一の採用例となっています。また、緩衝器には大容量の緩衝性能を持つゴム式のRD90形が用いられています。

荷役機構と安全性

荷役時に使用できる8組の側柱は、伸縮可能であり、積荷の高さに応じて調節することができます。車体の偏倚を考慮し、曲線半径100mにおいては、中央部7,100mmに側柱が設けられていない為、積載できる物品の長さは13,000mm以上に制限されています。

さらに、側柱の上部に設置された締付梁は、スクリュージャッキによって積荷を押さえつけ、荷崩れを防止する役割を果たします。締付梁の接触面には摩擦係数の高いゴム素材が使用されており、安全性を高めています。使用されていない際には、この締付梁は床下の格納箱に収納可能です。

役割と運用

チキ900形は専属の貨車として運用され、その配置先は大阪鉄道管理局の飾磨駅でした。この車両は、特に大型の長尺物の輸送に特化しており、1985年には除籍されるまでその機能を全うしました。特筆すべきは、東武鉄道が創立80周年を記念して製作したトク500形のレプリカの輸送に本貨車が使用されたことです。

本形式は、3000形や1500形といった他の長物車と異なり、より効率的な長尺物の輸送を実現し、国鉄の貨物輸送の技術向上に寄与しました。しかし、1985年に形式消滅を迎えることとなります。このように、国鉄チキ900形貨車は、長物輸送の歴史における重要な役割を果たし、当時の技術革新の一端を担った車両でした。

参考文献

• - 岡田直昭・谷雅夫『新版 国鉄客車・貨車ガイドブック』1978年
• - 岩堀春夫『国鉄貨車』2001年
• - 日本国有鉄道工作局『国鉄車両諸元一覧表（昭和47年版）』

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