国鉄トキ900形貨車

国鉄トキ900形貨車について

国鉄トキ900形貨車は、1943年から1946年にかけて日本国有鉄道によって製造された無蓋貨車です。この貨車は、特に第二次世界大戦中に輸送力を強化するために開発されたもので、総生産数は8,209両にも上ります。戦時設計の特殊な三軸貨車として知られていますが、残念ながら構造上の欠陥や製造の粗悪さから、戦後は比較的早い段階で淘汰される運命をたどりました。

構造と設計思想

トキ900形の設計は、資材や労力を節約しつつ、輸送力を最大限に高めることを理念にしていました。一般的な二軸無蓋車のホイールベースに中間軸を追加し、三軸化することで荷重の分散が可能となりました。また、側面や妻板の高さが増され、貨物の積載量を増加させる工夫も施されています。貨車の最高速度は65 km/h、自重は10.7 tで、積載可能荷重は30 tとなっています。

戦時中の背景

当時、日本国内では軍需物資の輸送が急務であり、海上輸送能力が制約されていました。このため、鉄道輸送の重要性が高まり、トキ900形はEF13形電気機関車やD52形蒸気機関車とともに、非常時の輸送を担うために設計されたのです。資材が乏しい戦時中にあっても、駅の有効長を最大限活用しながら貨物を効率よく輸送するための工夫がなされました。

戦時設計のもと、製造コストの削減や構造の簡素化が進められましたが、その結果、強度面や走行安定性に問題を抱えることにもなりました。三軸固定構造は特に悪影響を及ぼし、脱線事故を引き起こす原因にもなりました。

特徴的な設計と問題点

トキ900形は、貨物列車の輸送効率を高めることを目的として設計されており、荷物を積む側板の高さやあおり戸の開閉方法を工夫しました。特に、側板が高く設定されており、バラ積みの貨物を効率よく積み下ろしできるようになっています。しかし、三軸構造はカーブ走行時に偏倚が生じやすく、中間軸が強くレールに押し付けられた結果、走行抵抗が大きくなるという問題が発生しました。実際には、10パーミルの上り勾配のある線路を走らせることができず、何度もトラブルが発生しています。

沿革と淘汰

トキ900形は戦時中のさまざまな用途に利用されましたが、戦後は強度不足や構造上の欠陥が多くの問題を引き起こしました。これによって、1946年度には7791両が残存していたものの、早期に廃車や他形式への改造が進められることとなりました。1959年までには全てのトキ900形が廃車されることとなり、その役割を終えました。

2000年には、浜松工場で1両が復元され、以降は公開展示されていましたが、2010年には移動させられ、再度カバーを掛けられることとなりました。また、トキ900が戦後にどのように利用されたのかについても、転用改造計画が立てられましたが、実際には多くの部品を再利用する形で解体されていきました。

結論

国鉄トキ900形貨車は、その特異な設計思想や大量生産により、戦時中の日本における重要な輸送手段となりました。しかし、その構造上の問題から、戦後には早期に淘汰されました。今日においても、その歴史を知ることで、当時の貨車がどのように機能していたのかを理解する手助けになります。

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