国鉄トラ30000形貨車

国鉄トラ30000形貨車について

国鉄トラ30000形貨車は、1955年（昭和30年）度から1957年（昭和32年）度にかけて製造された、17トン積みの二軸無蓋貨車です。合計2,200両（トラ30000 - トラ32199）が、鉄道車輛工業、汽車製造、日本車輌製造、川崎車輛、ナニワ工機、若松車輛、日立製作所といった複数のメーカーで製造されました。

概要

この貨車は、「長トラ」と呼ばれるグループに属し、車体を限界まで伸ばすことで、2間（約3.6m）の積荷を2個直列に積載できるように設計されています。基本的な構造は、前級のトラ6000形と共通しており、その改良型と見なすことができます。主な改良点として、車軸のばね吊り方式が一段リンク式から二段リンク式に変更された点が挙げられます。この変更により、軸距はトラ6000形の4,600mmから5,000mmへと400mm延長され、側ブレーキの位置も車体中央部に移動しました。二軸無蓋貨車としては初めて、新製時から二段リンク式ばね吊り受けを採用した形式です。

車体構造

車体は、妻板、あおり戸、床面すべてが木製です。妻板の高さは1,100mm、あおり戸の高さは800mmとなっています。主要な諸元は、全長9,550mm、車体長8,750mm、全幅2,710mm、床面積21.2m2、容積44.5m3、自重9.3tです。走り装置は二段リンク式で、最高運転速度は75km/hに対応しています。

運用と終焉

トラ30000形は、前級のトラ6000形などとともに、汎用無蓋車の主力として全国各地で使用されました。しかし、輸送力増強のため、全長を短縮し、あおり戸を高くした「コトラ」と呼ばれるトラ35000形などの量産が開始されたため、後継形式の登場は1967年（昭和42年）のトラ70000形まで待つことになります。1972年（昭和47年）からは本格的な廃車が始まり、1984年（昭和59年）度には形式消滅となりました。しかし、木製床であったため、特定の荷主からは長く愛用されたようです。

コンテナ積載試験

1955年（昭和30年）、国鉄は鉄道・道路一貫輸送用のコンテナとして、2.5トン積みの3000形コンテナを試作しました。このコンテナの積載試験に、トラ30000形が選定され、1955年度製造の300両は、コンテナ緊締用金具を装備して落成しました。さらに、そのうち2両（トラ30000・トラ30098）は、コンテナ積載専用としてあおり戸を取り外した状態で製造されました。コンテナの積載数は5個です。

コンテナの固定方式は、専用車ではコンテナと車両間をたすき金具とターンバックルで固定するもので、台枠側面には専用の金具が設けられました。コンテナ積載時には、側面のあおり戸を取り外して使用するため、側ブレーキ使用時の手すりを台枠側面に水平に設置しました。一般車では、貨車床板に移動防止用の当て木を打ち付け、コンテナ同士を針金で緊縛する方法が用いられました。

しかし、3000形コンテナの試用はうまくいかず、1956年度以降の製造車にはコンテナ固定用金具は装備されず、側ブレーキ用の手すりも廃止されました。1959年（昭和34年）6月に3000形コンテナの使用が終了すると、初期車の緊締用金具も撤去され、専用車2両も1962年（昭和37年）に一般車に復元されました。復元作業は、大宮工場と吹田工場でそれぞれ1両ずつ行われました。

同形車：羽後交通トム5形

羽後交通では、1966年（昭和41年）11月に協三工業で2両（トム5, トム6）の国鉄トラ30000形同形車を製造しました。これらはトム5形と呼ばれ、荷重は17トンでしたが、なぜか「トム」を称していました。両車とも雄勝線に配属され、国鉄直通車としても使用されましたが、1972年（昭和47年）8月に直通認可が取り消されました。1973年（昭和48年）4月の雄勝線廃止まで在籍しました。

まとめ

国鉄トラ30000形は、その汎用性の高さから長年にわたり日本の貨物輸送を支えた重要な貨車でした。コンテナ輸送への挑戦や、一部が地方鉄道に譲渡されるなど、様々な歴史を刻みながらも、その役割を終えました。この貨車は、日本の鉄道貨物輸送の発展を語る上で欠かせない存在です。

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