国鉄ナヌ32形客車

ナヌ32形暖房車：国鉄における異色の存在

ナヌ32形は、かつて日本国有鉄道（国鉄）に在籍した事業用客車、特に暖房車として知られています。この車両は、1930年代に製造され、そのユニークな外観と機能で、鉄道史に名を刻みました。

誕生と変遷

1934年（昭和9年）10月に3両、そして1936年（昭和11年）1月に2両が製造されたナヌ32形は、当初ナヌ6900形（ナヌ6900 - 6904）と称されていました。製造を担当したのは、1934年製が川崎車輛、1936年製が日立製作所です。これらの車両は、1941年（昭和16年）に鋼製客車の新たな番号体系が制定された後も、しばらくは旧来の形式番号のままで運用されました。しかし、1949年（昭和24年）7月、暖房車も鋼製客車の番号体系に組み込まれることとなり、ナヌ32形（ナヌ30 1 - 5）として再スタートを切りました。

構造と特徴

ナヌ32形の車体は全鋼製で、全長6,600mmという短い車体の前後に、それぞれ1,250mmのデッキを備えています。車体の前位には水タンク、後位には炭庫が装備されており、側面から見ると凸字型に見えるのが特徴です。中央部の車体内には、蒸気発生用のボイラーが搭載されていました。両側の妻面には、片開き扉が車体に向かって右側に設けられており、側面の窓配置は1D3D1となっています。屋根上にはガーランド型通風器が1個と煙突が設置され、ボイラー整備のために屋根の一部を取り外せる構造でした。全長は10,000mm、全高は4,000mmです。

台車は、ワキ1形と同じ高速貨車用鋳鋼製の2軸ボギー車TR24を使用し、台車中心間距離は5,500mmでした。ボイラーの能力は、常用圧力10kg/cm2、火床面積0.7m2、全伝熱面積23.0m2（煙管19.4m2、火室3.6m2）でした。運転整備重量は27.52t、空車重量は21.98 - 22.32t、水槽容量は3.5m3、石炭積載量は0.7tとなっています。

運用と終焉

ナヌ32形は、製造当初、1934年製が中央本線の飯田町駅 - 甲府駅間用、1936年製が上越線の清水トンネル区間用として製造され、それぞれ甲府機関区、水上機関区に配置されました。その後、上越線用が中央本線に転用され、最終的には全車が中央本線で使用されることとなりました。戦後、東海道本線からマヌ34形が転入してくると、予備車として使用されることが多くなりました。1が1968年（昭和43年）11月に、残りの車両が1970年（昭和45年）2月に廃車され、形式消滅しました。最終配置は、1が八王子機関区、残りが甲府機関区でした。

参考文献

* 岡田誠一「RM LIBRARY 44 国鉄暖房車のすべて」2003年、ネコ・パブリッシング刊 ISBN 4-87366-334-2


ナヌ32形は、その短い生涯の中で、日本の鉄道史における暖房車の役割を支え続けました。その独特な外観と構造は、今もなお鉄道ファンに語り継がれています。

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