国鉄1430形蒸気機関車

1430形蒸気機関車

1430形は、かつて鉄道院（日本国有鉄道の前身）に在籍したタンク式蒸気機関車です。総数5両という少数ながら、その経歴は複雑で、大きく分けて2つのグループに分けられます。

北海道炭礦鉄道由来のグループ (1430, 1431号機)：1906年（明治39年）の北海道炭礦鉄道国有化に伴い鉄道院に編入された2両。
博多湾鉄道由来のグループ (1432-1434号機)：1911年（明治44年）に鉄道院が保有していた10形蒸気機関車との交換で編入された3両。

形態

ドイツ製の機関車らしく、全体的にかっちりとした印象を受ける外観が特徴です。ボイラー中心よりも低い位置にオフセットされた煙室扉も特徴の一つ。弁装置は外側アラン式を採用しています。また、水タンクは側面に加えて、台枠内にも設けたウェルタンク機です。

主要諸元 (1430, 1431号機)

全長: 8,687mm
全高: 3,671mm
全幅: 2,635mm
軌間: 1,067mm
車軸配置: 0-6-0(C)
動輪直径: 1,092mm
弁装置: アラン式外側型
シリンダー (直径×行程): 381mm×559mm
ボイラー圧力: 12.4kg/cm2
火格子面積: 1.3m2
全伝熱面積: 73.9m2
煙管蒸発伝熱面積: 67.2m2
火室蒸発伝熱面積: 6.7m2
ボイラー水容量: 2.6m3
小煙管 (直径×長さ×数): 44.5mm×3,207mm×150本
機関車運転整備重量: 33.14t
機関車空車重量: 24.59t
機関車動輪上重量（運転整備時）: 33.14t
最大機関車動輪軸重（第3動輪上）: 12.08t
水タンク容量: 4.98m3
燃料積載量: 1.27t
シリンダ引張力 (0.85P): 7,640kg
ブレーキ装置: 手ブレーキ

北海道炭礦鉄道の1430形

1900年（明治33年）にドイツのハノーバー機械製造会社で製造された2両 (製造番号3445, 3446) が、北海道炭礦鉄道にN形（61, 62）として導入されました。その後ヲ形と改称されています。この2両は元々、九州の金辺鉄道が発注したものでしたが、金辺鉄道の経営状況が悪化したため、北海道炭礦鉄道が引き取ったという経緯があります。

1906年の鉄道国有化により、1909年（明治42年）に鉄道院の車両称号規程に基づき、1430形（1430, 1431）に改称されました。国有化後も北海道で使用されましたが、1920年（大正9年）に廃車。その後、八幡製鉄所に譲渡され、97, 95と付番。さらに1952年（昭和27年）には352, 351と改番されました。八幡製鉄所で使用される際、運転室やシリンダーなどに大幅な改造が行われ、実質的には代替新造に近い状態となり、1963年（昭和38年）まで使用されました。

博多湾鉄道の1430形

1911年（明治44年）2月には、鉄道院が保有していた10形5両との交換で、博多湾鉄道が所有していた3両 (1 - 3) が鉄道院籍に入り、1430形（1432 - 1434）に編入されました。この3両はハノーバー製ではなく、ヘンシェル社によるOEM生産されたもので、製造番号はハノーバーが4022 - 4024、ヘンシェルが6326 - 6328です。

鉄道院に編入後、すぐに中部鉄道管理局、次いで東部鉄道管理局に転属。1917年（大正6年）には北海道に転属しました。その後、1922年（大正11年）8月に1432が輪西製鉄所（現・日本製鉄室蘭製鉄所）に、1923年（大正12年）3月には1433, 1434の2両が九州の古河鉱業に払い下げられました。輪西製鉄所に譲渡された1432は9、後にS-312と改番され、原型を保ったまま1963年まで使用されました。古河鉱業に払い下げられた2両は、目尾の採砂専用線で使用されましたが、番号は付与されませんでした。1434に相当する1両は、その後日本軽金属清水工場専用線に移って2となり、目尾に残った1両は1960年（昭和35年）に解体されました。

参考文献

臼井茂信「国鉄蒸気機関車小史」1956年、鉄道図書刊行会刊
臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成」1969年、誠文堂新光社刊
臼井茂信「機関車の系譜図 2」1972年、交友社刊
金田茂裕「形式別 国鉄の蒸気機関車 I」1984年、エリエイ出版部/プレス・アイゼンバーン刊
金田茂裕「日本蒸気機関車史 私設鉄道編 I」1981年、エリエイ出版部/プレス・アイゼンバーン刊

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