国鉄207系電車

国鉄207系電車の概要とその歴史

国鉄207系電車（こくてつ207けいでんしゃ）は、日本国有鉄道（国鉄）が1986年に製造した直流通勤形電車です。1987年の国鉄分割民営化によって、全車が東日本旅客鉄道（JR東日本）に引き継がれました。207系は、その軽量なステンレス製車体と高い加減速性能を備えており、特に常磐緩行線での運用に適していました。

投入の経緯

国鉄では、1984年から北陸新幹線向けのVVVFインバータ制御の研究を進めていました。この過程で101系を改造し、試験データの収集が行われました。次のステップとして、量産向けの新たな車両を製造することが決定され、常磐緩行線がその投入対象に選ばれました。この路線は、帝都高速度交通営団（現在の東京地下鉄）との直通運転を行っており、高加減速性能と省エネルギー性能が必要でした。そのため、203系との比較検討も行いながら、1986年11月の国鉄ダイヤ改正に合わせて製造されました。初めて投入されたのは、試作車900番台の10両編成1本でした。

車両の特徴

車体

207系は、当時製造中の205系に準じたデザインで、ステンレス製の軽量車体が特徴です。前面中央部には非常用貫通扉が設けられ、安全性が高められています。分割民営化後、前面のJNRマークはJRマークに置き換えられ、側面の表示とともに少しの装変更が加えられました。

車内設備

内部はクリーム色の内装と薄茶色の床敷物が印象的で、座席はロングシートのスタイルを採用しています。座席のモケットは当初は205系と同じでしたが、後年に印が入った青色ベースのものに変更されました。乗務員室の背面仕切壁には窓が設けられ、視認性も向上しています。

機器類

台車は205系同様の軽量ボルスタレス台車が採用されています。プラットフォームには、様々なメーカーのインバータ装置が装備されていますが、音はほぼ同一の特性を持ち、主電動機と駆動装置も国鉄の仕様としては新しい技術で統一されています。さらに、VVVFインバータ制御による高い加減速性能が提供されています。

運用と結果

1986年11月に完成した207系は、各種試運転を経て、1986年12月29日に営業運転を開始しました。試験的な運用ながら、悪天候時の空転などの欠点も浮き彫りとなりました。製造コストが高かったことや、他の編成数に対する必要数の補充がすでにあったため、この直流通勤形電車の製造は1編成のみで終了しました。1980年代後半の状況では、VVVFインバータ制御車両の製造コストが高く、実運用においても様々な調整が必要でした。

JR西日本の207系との違い

西日本旅客鉄道（JR西日本）の207系は、4ドアのVVVFインバータ車として1991年から導入されましたが、国鉄207系とは異なるデザインと技術が採用されています。こうした違いから、鉄道ファンのメディアでは同シリーズとして取り扱われつつも、実際には異なる車両と見なされています。

結論

国鉄207系電車は、技術革新が要求される時代において、特に常磐緩行線において重要な役割を果たしました。今なお、そのデザインや仕様に注目が集まり、後の車両に多大な影響を与えたことは間違いありません。208系への更新や置き換えが進む中で、この車両の遺産がどのように受け継がれていくのか、今後も注目です。

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