国鉄2820形蒸気機関車

2820形タンク式蒸気機関車の概要

2820形は、かつて日本の鉄道において活躍したタンク式蒸気機関車です。この機関車は、九州鉄道が1898年にアメリカのブルックス・ロコモティブ・ワークスから輸入したもので、当初は102形として知られていました。
この機関車の車軸配置は2-6-0（1C）で、単式2気筒、飽和式の設計です。さらに、製造番号2898から2909の合計12両が輸入されました。

歴史的背景と運行

九州鉄道が国有化された後、1909年には鉄道院の規程に基づき、2820形に改称されました。この機関車は九州の直方に配置され、筑豊地区で石炭の輸送に利用されました。しかし、経年劣化により全ての車両は1925年に廃車され、民間への売却や保存は行われませんでした。

外観と機械的特性

2820形の外観は、ブルックスのデザインを踏襲していました。特徴的な細い煙突と、大きな側水槽が運転室と一体となっている点が目を引きます。後部の裾はS字曲線で下がった形状をしており、デザインの独自性を示しています。しかし、この車両には機械的な問題がありました。特に第3動輪の軸重が15.44トンに達し、良好なバランスが欠如していたため、逆運転には適していませんでした。そのため、民間への払下げが行われなかったという背景があります。

主要諸元

2820形の主要な技術仕様は以下の通りです：

• - 全長：9,652mm
• - 全高：3,632mm
• - 全幅：2,337mm
• - 軌間：1,067mm
• - 車軸配置：2-6-0 (1C)
• - 動輪直径：1,270mm
• - 弁装置：スチーブンソン式アメリカ型
• - シリンダー（直径×行程）：432mm×559mm
• - ボイラー圧力：9.8m²
• - 火格子面積：1.31m²
• - 全伝熱面積：84.5m²
• - 煙管蒸発伝熱面積：76.5m²
• - 火室蒸発伝熱面積：8.0m²
• - ボイラー水容量：2.9m³
• - 小煙管（直径×長サ×数）：45mm×2,885mm×190本
• - 機関車運転整備重量：45.51t
• - 機関車空車重量：35.86t
• - 機関車動輪上重量（運転整備時）：39.58t
• - 機関車動輪軸重（第2動輪上）：15.44t
• - 水タンク容量：5.0m³
• - 燃料積載量：1.5t

性能と作動

この機関車の性能については、シリンダ引張力が7,820kgで、制動方式として手ブレーキと蒸気ブレーキを使用しています。こうした基本的な性能は、当時の蒸気機関車として標準的なものでありました。

引用文献

2820形に関する詳細なデータは、以下の文献にて確認できます：

• - 臼井茂信「国鉄蒸気機関車小史」1956年、鉄道図書刊行会刊
• - 臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成」1969年、誠文堂新光社刊
• - 臼井茂信「機関車の系譜図 2」1972年、交友社刊
• - 金田茂裕「形式別 日本の蒸気機関車 I」エリエイ出版部刊

2820形は日本の鉄道史の中で特異な存在であり、その魅力的なデザインや歴史は今でも多くの鉄道ファンを惹きつけています。

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