国鉄3900形蒸気機関車
3900形蒸気機関車の概要
3900形は、日本の国鉄の前身である官設鉄道に在籍したラックレール式蒸気機関車です。この機関車は1892年と1908年にドイツのエスリンゲン社で製造され、全部で7両が製造されました。3900形は、官設鉄道において初めて導入されたドイツ製の蒸気機関車としても知られています。
製造背景
官設鉄道が高崎と直江津間の鉄路を建設していた頃、横川から軽井沢にかけての碓氷峠には非常に急な勾配（最大66.7‰）や多くのトンネルが存在し、そのため通常のインフラでは対応が難しい状況でした。この困難な状況を克服するために、日本初のラック式鉄道を使用することが決定されたのです。そのために特別に設計された蒸気機関車が必要となり、それが3900形です。
3892年には4両（製造番号2502 - 2505）が製造され、当初はAD形に付番されましたが、1894年には日本鉄道分離により改番が行われ、126, 128, 130, 132となりました。1898年には鉄道作業局が発足すると、この形式はC1形として再び改番され、最終的に1908年にはさらに3両がエスリンゲン社から発注されました。これらは518 - 520号として運用され、最終的に3900形に改称されました。
機関車の特性
3900形は、アプト式と呼ばれる特殊な機構を持つため、通常の蒸気機関車と異なり、外側に2つのシリンダーを配置し、ラックレール用のピニオンを駆動するための専用シリンダーが内側に設置されていました。これにより、最大の勾配を克服できる性能を保持しています。ボイラー上部には大型の蒸気ドームがあり、全体的な外見も非常に特徴的です。さらに、急勾配に対応するために、通常の真空ブレーキに加え、反圧ブレーキ、バンドブレーキも取り付けられました。
また1898年ごろには、ボイラー性能の向上を図って重油併燃装置が設けられ、さらに高性能を求めた設計がなされています。
主要諸元
3900形の主要諸元は以下の通りです。全長は9,100mmで、全高は3,835mm、軌間は1,067mmです。車軸配置は0-6-0(C)となっており、動輪直径は900mm、ラック用のピニオン直径は573mmでした。シリンダーの直径は390mmで行程は500mm、ボイラー圧力は12.4kg/cm2です。機関車重量は39.56t、最大軸重は13.78tに達します。
運用の歴史
3900形は官設鉄道の中で重要な役割を果たし、貨客を問わず多くの列車に使用されましたが、その操作には多くの困難が伴いました。特に、ピニオンの取り付けミスや、扱いに不慣れな技師の問題から試運転は波乱含みでした。しかし、何とか開業を果たし、その後20年もの間、同区間の運行を支えました。多くの場合、乗客や乗務員は煤煙に悩まされ、時には命に関わる事故も発生しました。最終的に1912年に該当区間が電化されたのちも、貨物列車や予備車として残ることとなりました。1922年には全ての3900形が廃車となりますが、アプト式蒸気機関車としては最後の形態として残りました。
保存状況
残念ながら、3900形の全車両は廃車・解体されてしまい、現在では保存されているものは存在しません。この貴重な形式の痕跡は、文献を通じてしか知ることができません。
参考文献
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