重油

重油の概要

重油（じゅうゆ）は、原油を常圧蒸留した際に得られる残油で、重質な石油製品の一種です。ガソリンや軽油、灯油と比べて沸点が高く粘り気が強いですが、水よりは軽い性質を持っています。英語では通常「燃料油（fuel oil）」という呼び名で知られています。

重油の性質

重油は、色合いが褐色または黒褐色で、比重はおおよそ0.82から0.95の範囲です。発熱量は約10,000から11,000 kcal/kgと高いため、エネルギー源として重要です。成分は炭化水素が主体ですが、成分の中には硫黄分や微量の無機化合物も含まれています。近年は、大気汚染の要因とされる硫黄分を減らすために、脱硫処理が一般的に行われています。

消防法によって危険物に指定されており、具体的には第4類第3石油類に分類されています。引火点は70℃以上200℃未満で、水には溶けない性質があります。

重油の製造方法

重油は、常圧蒸留や減圧蒸留を通して得られる高粘度の油を調合し製造されます。使用目的に応じて、その粘度や硫黄分、流動点、引火点、残留炭素分などの特性を調整して製品化されます。最近では、アスファルトを利用した発電技術も広まっており、重油からガソリンや灯油など、より収益性の高い製品への転換が進んでいます。これにより、重油の供給量は減少し、品質が悪化しているとの指摘もあります。

重油の規格と品質

重油は動粘度によって1種（A重油）、2種（B重油）、3種（C重油）の3種類に分けられ、さらにA重油は硫黄分により1号と2号に分類されます。A重油は軽油との混合比率が異なり、1種1号は硫黄分が0.5％以下の低硫黄タイプ、1種2号は0.5％以上2.0％以下で高硫黄タイプとされています。

再生重油というカテゴリの製品もあります。これは、自動車用エンジンオイルや工業用潤滑油の廃油を精製して得られます。この再生重油も、A重油やC重油の代替品として利用されるようになってきましたが、再生重油は新たに定められた独自の規格に従っています。

重油の利用用途

重油は多様な用途に供されます。A重油は、主に農耕機や漁船の燃料として使用されることが多く、特に環境問題に配慮した使用が求められているため、ビルや病院、学校などの暖房にも適用されています。高硫黄のHSA重油は、主に工場や小型ボイラーの燃料、火葬場でも使用されることがありますが、環境意識の高まりとともに他の燃料への移行が進んでいます。

B重油やC重油は、船舶用の大型ディーゼルエンジンや工業用の発電所など、大規模なレベルでの利用がなされます。しかし、これらの重油は粘度が高いため、使用前に予熱が必要です。また、C重油使用の場合、不純物が多いため、清浄機での処理が事前に行われます。

再生重油は、廃潤滑油から得られるもので、工業用ボイラーや直火燃料として利用されますが、その性質により灰分を多く含むことがデメリットです。これをカバーするために、ブレンドしたバイオ再生重油が注目されています。

不正軽油問題

A重油は軽油に比べて安価であるため、その性質が似ていることから不正に使用される問題が懸念されています。このため、識別剤を添加するなどの対策が講じられ、税収の確保や環境保護に向けた監視活動が行われています。

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